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ママ・パパの気持ち

Q. 1歳の子の母。過去に虐待された体験があり、不安の多い子育てです。 (2014.1)

  • (妊娠週数・月齢)1歳0か月

1歳の女の子の母親です。夫は帰宅が遅く、双方の両親とはほとんど会うことがなく、不安の多い子育てをしています。とくに不安を増長させるのは、私が過去に親からの虐待を受けており、「親子」がどういうものなのか、感覚的にいまでもわからないことと、また、疲労困憊して娘の相手ができないとき、虐待の始まりのように感じて鬱々としてしまうことです。子どもを持って、苦しかった過去を頻繁に思い出すようになり、いままたとても苦しんでいます。

回答者: 帆足暁子先生

 苦しいなかで、よくここまで育ててこられましたね。疲労困憊しても娘さんの相手をしようとされる、あなたの懸命な思いを感じます。

 誰の助けもなく子育てをするのは大変なことです。そのうえ、優しい母親のモデルもありません。「親子」がどういうものなのか感覚的にわからないということ、わかるような気がします。あなたが過去に親ごさんから虐待された記憶が、あなたのなかにしっかり残っています。その記憶に封をして、記憶にない子育てをつくろうとしているのですから、こんなに大変なことはありません。「親子」がどういうものなのか、これで良いのか確信が持てないという不安をずっと抱えてしまいます。

 まずは、一緒にいて安心できて、楽だと思える親子関係を育みましょう。これは親子だけではなく、夫婦の関係も同じです。これがいちばん大切です。そして、子育ても一緒にいて安心できること。それにはお互いに無理をしないこと。お子さんの思いも大切にしたいし、親であるあなたの思いも大切にしたい。お子さんの相手が楽しかったら相手をしたくなりますし、したくなかったら「ごめんね、遊んであげたいけれど疲れたから、いまは相手をしてあげられないの、休憩!」と言って、相手をしなくて良いのです。子どもは、言葉がわからない年齢であっても、大好きなあなたの言葉から、あなたの思いを感じ取ろうとしてくれます。伝える内容は、子どもにとって良いことばかりでは、もちろんありません。でも、対等な人間同士、そのときそのときの自分のほんとうの気持ちを言葉に換えて、相手にわかってもらおうとすること・・・・・・これが子どもにとっても親にとっても安心できる関係をつくるコツです。

 お子さんの「相手ができないとき、虐待の始まりのように感じてしまう」のは、なぜですか。最初は、相手をしてほしいお子さんの気持ちを察して、「遊んであげたい」あるいは「遊んであげなければ」と思われるのではないでしょうか。でも、実際のあなたは疲労困憊していて、そのエネルギーはない。それでもがんばろうと無理をしているうちに、こんなに疲れているのに、あなたの思いを察してくれずに相手をしてほしいと思うお子さんを嫌になったり、さらには怒りに近い思いが出てきたりするのではないでしょうか。このような気持ちの流れは無理をしたときには当然の思いであって、虐待の始まりではありません。

 でも、お互いの気持ちが一方通行のような気がします。相手をしてほしいというお子さんに、あなたの懸命な思いが伝わっていないのではないでしょうか。子どもであっても大人同士であっても、言葉で、自分の思いをきちんと伝えないとわかってもらうことはできません。

 もちろん、言葉を怒りの感情といっしょに相手にぶつける、ということではありません。感情的になるとお互いの感情だけがエスカレートして、ほんとうに伝えたいことは伝わらなくなってしまいます。穏やかに「あなたが相手をしてほしいと思っていることをわかっていること」「でも、いまは疲れていて相手をしたい気持ちになれないこと」「ごめんねと思っていること」など、あなたの気持ちを一つ一つていねいに伝えてみてください。じっと聞いて、わかろうとしてくれます。コツは感情的にならないこと。お子さんが感情的に自分の思いをぶつけてきたとしても、大人であるあなたは振り回されずに淡々と穏やかに、お子さんの声よりトーンを少し下げて伝えることです。

 思い出したくない過去を頻繁に思い出すことは、とても苦しいことです。でも、その苦しみには意味があるのです。

 いまのまま、子どものときに虐待された思いを封じ込めても、そのときに傷ついた思いは心の底に残っています。苦しかった過去を思い出すのはできればしたくないことですが、子育てをしながら、苦しかった子どものときの自分を、いまのあなたが「苦しかったね」「よくがんばったね」と受け入れていくことで、あなたの気持ちが癒されていきます。それは、あなたがこれからの人生を楽しく充実したものにしていくための時間なのだと思います。

 あなたが癒されるためには、あなたの苦しかった思いを聞いてくれる人が必要です。地区担当の保健師さんや、子ども家庭支援センターの保育士さんなど、あなたが安心して話せる人に、あなたの苦しかった思いを話してください。そして、いまのあなたも支えてもらってください。