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性格・親のかかわり・育て方

Q. 3歳半の娘が無理な要求をして泣き叫ぶことがあり、イライラします。 (2014.3)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳半の娘がいます。ほとんどのことを自分でできますが、起床時、空腹時などは抱っこや着替えの手伝いをせがみ、よく泣き叫びます。なるべく応えたほうがいいのはわかっていても、自分に余裕がないときや、あと数歩で目的地なのに抱っこをせがまれたり、出した食事の食器類が気に入らないと言って泣いたり、無い物を欲しがるので買い物に行こうと言うとそれも嫌がって泣くなど、応えるのが嫌になるような要求をすることがたびたびあります。そのため、だんだんと共感してなだめる気にもなれなくなり、最近は泣いたらすぐにイライラしてしまい、「抱っこして欲しいなら泣き止んで!」などと言ってしまう自分がいます。どのように気持ちを整理し、子どもに対応すればいいでしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 お子さんに良い関わりをしたいと思っているのに、こういう状況が続いたらイライラする気持ちになるのもよくわかる気がします。
どのように気持ちを整えて、お子さんに対応すればよいかを知りたいのですね。

 まず、最初に考えたいことは、なぜ、お子さんが泣くのかということです。子どもが泣くときは必ず意味があります。多くの場合、不快や不安といった気持ちから起きています。「起床時、空腹時などは抱っこや着替えの手伝いをせがみ、よく泣き叫びます」ということから、もしかすると生理的なリズムの切り換えがあまり上手に移行できなかったり、空腹感などの生理的な不快さが「泣き」を引き出してしまうのかもしれません。

 あるいは、3歳半という年齢は自己主張が育まれていく時期であることから、「あと数歩なのに抱っこ」をせがみ、自分の思いを通そうとして泣くのかもしれません。

 でも、「食器類が気に入らないと泣いたり」「無い物を買いに行こうと言うとそれも嫌がって泣く」など「応えるのが嫌になるような要求をする」ことは、単に自分の思いを通そうとする自己主張とは異なっています。そこから読み取れることは、一見要求しているように見えることは表面的なことで、ほんとうに求めていることとは違うということです。

 だから、どんなにあなたが要求に応えても、お子さんの立場からすれば「応えていない」ことになります。でも、あなたの立場からすれば「要求に応えている」ので、泣き続ける意味が理解できませんし、強く要求されたり、さっきとは違う要求を出されたりすると、「だんだん応えるのが嫌になる」との思いになります。

 では、どうしてほんとうに求めていることとは違う要求をするのでしょう? それは、お子さん自身にも、自分が何を求めているのかわからないからです。

 生理的な不快さがお子さんの「泣き」を引き出している場合には、「なかなか起きられないよね」「おなかがすいたね」などとゆっくり声を掛けながら抱き抱えてゆったり同じペースで揺らしてあげると、なだめられる心地よさから泣き止むこともあります。また、リズムの切り換えがスムーズにできるよう、全身を動かして遊んだり大きな声を出して笑ったりすることも効果があります。

 自分の要求を通したいための「泣き」は、あなたが聞いてあげられることに応えてあげれば、もちろん泣き止みます。でも、あなたが荷物をたくさん持っていてとても「あと数歩の抱っこ」ができないようなときは、やはり穏やかにゆっくりと「いまはできないの」と応えましょう。自分の要求を通そうとして暴れたり大泣きしたりしますが、一度簡単に説明したあとは、淡々と歩いて玄関に入っていいのです。そして、にっこり笑って「はい、ただいま!」とあなたのほうから気持ちを切り換えれば、時間はかかってもお子さんも気持ちを切り換えていきます。

 この場合のポイントは2つあります。自分の思い通りにならないこともあるという体験(欲求不満耐性を育む)と、拒否されたからといって自分の存在自体が拒否されたわけではないという体験(安心感)です。子どもは自分の要求を拒否されたとき、自分の存在を拒否されたという不安を抱いてしまうので、そのあと、あなたのほうから抱っこしたり、一緒に楽しく遊んだりして不安を解消することが必要です。

 そして、「応えるのが嫌になるような要求」をするときの「泣き」が、お子さん自身も自分が何を要求しているのかわからないなかでの「泣き」です。これは多くの場合、「不安」から起きています。この不安は、要求を通すか通さないかという戦いが安心を求める「存在感の拒否」の戦いにすり変わってしまう捩(ねじ)れによって起きています。

 子どもは安心感を求めています。でも、一度捩れて自分の存在を拒否された不安感は、どうすればもう一度安心できるのか——愛されている実感が得られるのか、子どもにはわかりません。子どもが手段は「要求を通してくれる安心感」しかないのです。子どもは安心しようとして次々と要求を出しますが、要求に応えてもらっても安心は得られず、捩れた不安感はなかなか解消されません。

 こういう状況になった場合、応えられない要求については「いまはできないよ」と穏やかにきちんと拒否をすることと、落ち着いているときに親のほうから子どもを求めて「抱っこ」「何でもないことで笑い合う」「ゆったりした楽しい遊び」などをすることの両方を、根気よく続けて関わることが必要です。

 子どもは親が嫌になるような要求を受け入れてもらっても、子ども自身が悪いことだとわかっているので安心しません。ちゃんとわかっているのです。それよりも、自分が悪い子ではないことを信頼して親がきちんと穏やかに止めてくれると、表面的には泣いて暴れても心理的にはとても安心します。

 お子さんにこれらのことを当てはめて考えてくださったら、きっと良い対応ができると思います。何といっても、あなたはお子さんの良いところがちゃんとわかっているステキなお母さんですから。3歳半でほとんどのことができるなんてステキなことです。良い育て方をされていらっしゃいますね。

 そして、もしも気持ちが疲れてしまったら、遠慮なく保健センターや子ども家庭支援センター等のサポート機関を活用するのも、もちろん良いと思います。