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歯とお口のケア

Q. 生後9か月。転倒で歯が抜けて再植しましたが、治療後の制約に無理を感じます。 (2014.12)

  • (妊娠週数・月齢)9か月

生後9か月の男の子ですが、先日つかまり立ちをしていて転倒しました。そのときテーブルの縁を噛んでいて、下の歯が1本抜けてしまいました。歯医者で再植してもらいましたが、「つくかどうかはしばらく様子を見ないとわからない」とのこと。歯はグラグラなので力を加えてはいけないと言われ、おもちゃは禁止、離乳食もドロドロのものを与えています。歯のためにおもちゃはすべて撤去し、タオルなどをカミカミしようとしたら「ダメだよ」と取り上げなければならず、息子の元気がなくなっていくように感じます。興味ある物すべてにダメと言う状況では息子がかわいそうで、今後の性格形成にも悪い影響があるのではないかと心配です。

回答者: 井上美津子先生

 せっかく生えてきたばかりの乳歯が脱落してしまって、さぞ驚かれたことでしょう。乳歯の外傷は、立ち歩きを始めた1〜2歳児にもっとも起こりやすいものですが、ときにはそれ以下の年齢でもつかまり立ちなどの際の転倒で起きることがあります。

 乳幼児では、歯を支える骨(歯槽骨)が未熟で骨密度も低いため、歯に衝撃を受けた場合、歯が折れる(破折)ことより、歯槽骨が衝撃を受け止めてグラグラになったり(動揺)、位置がずれたり(転位)しやすく、さらに強い力が加わると歯が脱落してしまいます。

 歯が脱落した場合でも、歯・歯肉・歯槽骨の損傷が少なく、受傷後の時間があまり経っていなければ、再植が試みられます。ただし、永久歯と違って乳歯の再植はあまり条件が良くありません。永久前歯の脱落では、再植後に隣の歯や少し奥の方の臼歯を固定源として使い、再植歯を固定することができます。固定して安静を図ることで、骨や歯根膜(骨と歯根の間の組織)のダメージの回復を図ることができます。
 乳歯でも、両脇の歯がしっかり生えていれば再植した歯を固定することができますが、9か月ではおそらく脇のほうの歯はまだ十分生えていないのではないかと思われます。しかも、脱落した乳歯の根の長さも短いのではないでしょうか。歯肉などの組織の生活力は旺盛なので、うまくすれば再植歯が生着することができますが、固定が十分にできないと再植歯のまわりの骨の治癒が起こりにくくなり、歯がグラグラのままになりやすいわけです。

 小さなお子さんに、歯を安静にするために食事から遊びまでを制限することは、保護者にとっても大変なことでしょう。とくに、おもちゃでも何でも口に持っていき、なめしゃぶることが大好きなこの時期に、長期間にわたってすべてのおもちゃを取り上げるのは難しいですね。

 ある一定の期間、再植歯が生着するかどうかの経過を見ていく(歯の動揺が改善するかどうかで判断していく)ことになるでしょう。1〜2週間程度でしたら、お子さんの性格形成までの影響を考えることもないかと思われます。できるだけ安静を図って傷の治りを待ち、それでも歯の動揺が止まらないようでしたら、残念ながら歯の保存をあきらめることになるかもしれません。

 口遊びがさかんな時期で、離乳食もこれからステップアップしていくべき時期なので、グラグラの乳歯をいつまでも残すために、制約の大きな生活を長期間赤ちゃんに強いるのは得策ではないでしょう。歯科医とよく相談して、時期的な目安をしっかり決めて、経過を見たうえで歯を保存するかどうか方針を決めていきましょう。