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教育・保育

Q. 幼稚園年少の男の子。登園時に抱っこをせがまれて困っています。 (2015.4)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

幼稚園年少組の男児です。登園するときに歩いてくれず、困っています。「歩けない」「抱っこして」とごねます。入園当初は、幼稚園でがんばっているからと抱っこしていたのですが、約一年たってもこの調子なのでほんとうに困っています。自転車もダメです。体重も重く、私の負担が大きいです。私も朝から怒ったりしたくないのですが、厳しくすると泣いて怒り、わざと転んだりします。降園時はだいたい歩きます。どう対応すれば自分で歩くようになりますか。

回答者: 帆足暁子先生

 幼稚園の年少さんともなると体重が重くなりますから、抱っこをして歩くのは大変ですね。それでも、入園当初は子どもも幼稚園でがんばっていると思うから、抱っこも仕方がないと思えます。でも時間が経ち、「もう、そろそろ大丈夫でしょう」という頃になっても、まだ「歩けない」「抱っこして」と言われると、「いつまで続くの、いい加減にして!」という思いになります。

 「どう対応すれば自分で歩くようになるのか」ということは、「なぜ、抱っこを求めるのか」ということを考えると、その答えが出てきます。なぜ、お子さんは「抱っこ」を求めるのでしょうか。
 子どもは、幼稚園に行かなければいけないことは、わかっています。ママやおとなたちがみんなそう言うからです。でも、なぜかはわかりません。どうしてママとお家にいてはいけなくなったのかわからないながらも、「幼稚園には行くもの」という現実を何とか受け入れようとします。このような、自分のなかで納得できないことに向かわなければならないとき、子どもは自分の気持ちに折り合いをつけるために必要なことを、直観的に求めてきます。
 それが、お子さんにとっては登園時の「抱っこ」なのでしょう。

 では、どうしたら「抱っこ」が必要にならなくなるのでしょうか。それは、お子さんが「幼稚園には行くもの」と納得できることです。つまり、お子さんにとって幼稚園が十分安心できて、楽しいところになるということです。やさしい先生や楽しいお友だちとの遊びを通して、ママと家にいては体験できない「子どもの楽しい世界」が広がることで、ママがいない幼稚園を子どもは納得して受け入れられるようになります。ただし、その時期は、子どもによって、家庭環境によって、園の環境によって異なります。

 親は、親の尺度で「これくらい」とその時期を考えます。それが子どもの納得する時期と合うと、お互いに穏やかな気持ちで「抱っこ」を卒業できます。でも、親の判断した時期に子どもが納得できていないと、子どもの「抱っこ」の要求だけが残ってしまい、親は「もう、十分でしょう。いつまで抱っこなの!」と子どもを怒ってしまうことになります。

 ここで大切なのは、親の尺度と子どもの尺度の違いに気づくことです。そもそも「抱っこ」の発端が、子どもが納得するための「抱っこ」ですから、子どもの尺度で考える必要があるのです。つまり「抱っこ」をいつ卒業するかは、子どもに任せるしかない、ということです。

 では、親は子どもが納得するまで「重い抱っこ」に耐えなければならないかというと、それも大変です。実は子どもも、ほんとうは他の子どもと同じように「抱っこ」がなくても幼稚園に行けるようになりたいのです。ですから、子どものためにも、親のつらさのためにも、なぜ納得できないのか、どうしたら幼稚園が十分に安心できて、ほかの子と楽しく遊ぶ場になるのかを考えることもよい方法です。そして、もし何か原因があるとすれば、それを除いてあげればよいのです。たとえば、「赤ちゃんが生まれて僕を嫌いになったんだ」という思いだったり、「パパとママがけんかした」という不安だったり、「幼稚園の先生がこわい」ということだったり、さまざまな理由があります。その理由をお子さんと一緒に整理して、安心させてあげることで、子どもの「楽しい世界」に気持ちが向くかもしれません。

 それでも、どうしても抱っこがつらいときや困るときもあります。そういうときはがまんしすぎず、子どもに説明してわかってもらってください。「ほんとうはあなたを抱っこしたいけれど、今日はからだがきつくてどうしても抱っこできないの。ごめんね。元気になったらまた抱っこするからね」と、静かに伝えてください。最初はごねるかもしれません。子どもは抱っこをしてほしいから。

 でも、子どもがごねるからといって親が折れて、「仕方がないわね、今日だけよ!」などとは言わないようにします。子どもに「ごねれば自分の思い通りになる」という体験をしてほしくないからです。子どもが泣いてごねても、「今日は無理」といったときは、貫き通します。逆に考えれば、「今日は無理」というときは、ほんとうに絶対に無理なときだけです。子どもも真剣ですから、親も真剣でなければ貫き通せません。覚悟がいります。

 降園時にはだいたい歩いて帰れるのですね。家に帰れるうれしさと同時に、幼稚園でも充実し始めたのかもしれません。自立していくときまであと少し。場合によっては、幼稚園の先生に相談し、お子さんに楽しい体験を増やしてもらうのもよいかもしれません。あるいは、送り迎えを他の人に頼むなど、あなたにとっても、お子さんにとっても無理をしすぎない方法を探してください。