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気になる子どものようす

Q. 4歳の男の子。最近、「人はいつか死んだり別れたりするのか」と頻繁に尋ねます。 (2015.7)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳の男の子です。仔犬が里親に出されるテレビ番組を見たことをきっかけに、「人はいつか別れなくてはいけないのか」「人はいつか死ぬのか」と、頻繁に聞くようになりました。「人はいつか死ぬけど、それはずっとずっと先のことでお父さんもお母さんもずっとあなたの側にいる」と言って抱きしめて安心させようしますが、そのときは落ち着いても、また同じ質問を繰り返します。普段は保育園でも元気いっぱいで、よく笑い楽しそうに過ごしています。どのように対応してあげれば彼の気持ちが安まるのか、また、質問の裏に何らかのフラストレーションが潜んでいるのではないかと気がかりです。

回答者: 汐見稔幸先生

 興味深いお子さんですね。
 4歳の男の子については、かつてフロイトが興味深い説を唱えました。この時期は自我が育ってきて、次第に親に頼らずにあれこれできるようになってくるのですが、母親との愛情関係にも変化が現れます。

 それまでは無邪気にお母さんに甘えていたのが、次第にそういうことをすると少し恥ずかしいという感情が湧いてきて、それと並行して、お母さんが愛しているのはお父さんだということに気づくようになります。そこで、子どもはお父さんと、お母さんの愛情を奪い合うような関係になっていくというのです。お母さんは僕のものだという感情と、「でも、お母さんはお父さんも愛している。だから僕が我慢するしかない」という感情との間で葛藤が始まるわけです。

 もちろん、子ども自身はそういうことを自覚しているわけではありません。そうして次第に、お母さんに対する愛情を意識の下に抑圧して、感じないようにしていく。そうなると少年期に入っていくというのです。それが再び現れるのが思春期で、そうした異性愛を他者に向けて大人になっていくのです。

 こうした複雑な葛藤感情をフロイトは「エディプス・コンプレックス」と呼びました。ご質問のお子さんは、フロイトのひそみに倣えば、「お母さんとの愛情関係が相対的なものかもしれないということにはじめて気がついた」と、説明できるかもしれません。いつまでも絶対的なものとしてあるわけではないのだ、いつか別れることもあるのかも、という気づきです。お父さんと愛情を奪いあうという葛藤関係ではなくて、お母さんの愛(お父さんとの愛も含んでいるかもしれません)を絶対のものと信じていたが、「そうでないことを知らされた」あるいは「そうでないかもしれないと気づいた」ということからくる、根源的な不安ですね。

 この不安は、実は誰にもあるものですが、気づく子とそうでない子がいるのかもしれません。それは、いつか、そういうものだと納得したときに、消えていくはずのものです。おそらく小学校に入学する前後には、そういうことで不安になっていたことも忘れるくらい、さっぱりと抜けていくと思います。ですから、何か問題があるのかもしれないなどと考えるのではなく、興味深い心性をもった子だなとむしろ楽しみにしているといいと思います。