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病気・予防接種

Q. 6歳。昨年インフルエンザワクチンで発疹が出たため、今季の接種を迷っています。 (2015.11)

  • (妊娠週数・月齢)6歳

6歳の娘のインフルエンザ予防接種について質問します。昨年、インフルエンザワクチンの2回目を接種した直後から目のまわりに発疹(じんましん)が出ました。1回目は何もありませんでした。そのときはジルテックを服用し、症状が治まりました。娘はアレルギー体質で卵の食物アレルギーもありますが、数値は極めて低く毎日食べても症状などが出ることはありません。ハウスダストや花粉による鼻炎のほうが酷いくらいです。インフルエンザワクチンは接種可能年齢になったときから毎年受けていますが、じんましんが出たのははじめてです。小児科では防腐剤の入っていないワクチンを使用しているそうですが、アナフィラキシーショックを考えると怖くて、今季の接種をどうすべきか悩んでいます。

回答者: 横田俊一郎先生

 インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーは、きわめて少ないですが毎年報告されています。厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)が定期的に開催されており、その結果は厚生労働省のホームページから閲覧することができます。この報告書を見ると、たとえば昨年10月から12月に接種されたインフルエンザワクチンの重篤なアナフィラキシーの頻度は、ワクチンメーカーに関係なく10万接種あたり0〜0.5と報告されています。

 原因のひとつとして、ウイルスを培養する発育鶏卵由来のタマゴ成分が考えられていましたが、日本のインフルエンザワクチンに含まれるタマゴ成分であるオボアルブミン濃度(1ng/ml)は、アナフィラキシーを引き起こす濃度(600ng/接種量以上)には遠く及ばないことがわかっていて、アナフィラキシーの原因にはならないとされています。

 防腐剤であるチメロサールがアナフィラキシーを引き起こす可能性は否定できませんが、前述のようにアナフィラキシー自体がきわめてまれです。チメロサールには水銀化合物が微量ながら含まれていて、それが子どもの神経の発達などに影響を与えるのではないかという意見があり、チメロサールの替わりにフェノキシエタノールという防腐剤を使用したインフルエンザワクチンが2008年に「化血研」(ワクチンなどの医薬品を手掛ける製薬メーカー)から発売されました。

 しかし、2011年からワクチンの接種量が3歳から0.5mlに増量された結果、このワクチンの接種者だけにアナフィラキシーが多発しました。調査の結果、フェノキシエタノールが原因であることが判明し、以後、化血研のワクチンの防腐剤は再びチメロサールに変更され、その後のアナフィラキシーの頻度は以前と同等に戻っています。

 現在はほとんどのワクチンに防腐剤(チメロサール)が使われていますが、「北里第一三共ワクチン」(大阪大学微生物研究所[ビケン]製造)の0.5mlシリンジ製剤と0.5mlバイアルのみが防腐剤を含んでいないワクチンとなっています。しかし、これらのワクチンによるアナフィラキシーが他より少ないというわけではありません。

 接種直後からじんましんが出現したとなると、ワクチンが原因である可能性は高いと思います。ただし、どの成分に対するアレルギーなのかはわかりません。次の接種のときに重篤なアナフィラキシーを起こすかどうかもわかりませんが、注意が必要なことは確かです。

 「予防接種の接種液の成分によって、アナフィラキシーを呈したことが明らかな者」は予防接種不適当者と決められていますが、ご相談のじんましんという症状だけではアナフィラキシーではありません。従って、次回も接種することはできますが、担当医とよく相談することが必要です。少量だけ接種して反応を見るという方法もありますが、総合病院などで万一に備えて接種するのもよいかと思います。

 一方、インフルエンザには抗ウイルス薬もありますので、敢えて危険をおかさず以後は接種しないというのもひとつの方法です。集団生活の状況や、心臓や肺の病気の有無なども考慮しなくてはならないので、最終的な判断はかかりつけ医とよく相談して決めていただきたいと思います。