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歯とお口のケア

Q. 1歳4か月。歯みがきを嫌がり、むし歯が心配です。 (2016.4)

  • (妊娠週数・月齢)1歳4か月

1歳4か月になりましたが、歯みがきを嫌がり毎回大騒ぎです。最近は口を開けるのも嫌がり、唇や舌で歯を隠してしまいます。テレビやおもちゃに夢中になっている隙に、少しだけできれば、まだいい程度です。歯ブラシを持つのは好きで、自分で口に入れたり出したりはしているのですが、私が仕上げみがきをしようとすると大泣きします。むし歯にならないか心配ですが、歯みがきをさせてくれる何かよい方法はありますか?

回答者: 井上美津子先生

 子どもの歯みがきに関しては、まずは2つのことを頭に入れていただくことが大切だと思います。

 一つめは、口はとても敏感な器官だということです。実は、口はからだの中でももっとも早い時期に感覚が発達し、刺激を受け止めて反応があらわれるところ。胎生8週(妊娠のごく初期)には、口のまわりへの刺激に対して身体の反応があらわれるといわれており、24週頃になると、口への刺激に対して吸う反射が起こります。これが吸啜反射といって、哺乳のために大切な反射となります。生まれたばかりの赤ちゃんは、目が見えないうちから口のまわりに乳首が触れるとそれを捉えて吸うことができますが、それができるのも、この反射があるからです。乳首が触れた刺激をしっかり感覚として受け止められるよう、唇や口のまわりは敏感にできているのです。一方、歯ブラシの刺激はけっこう強いものです。赤ちゃんは、自分で指しゃぶりや玩具しゃぶりをしながらいろいろな刺激を口に取り込んでいきます。そうやって、だんだん口の敏感さを減らしていくのですが、それにともない哺乳反射(吸啜反射を含む、哺乳に必要な一連の反射)も弱まっていきます。

 離乳期には、哺乳反射もなくなり、スプーンから食べ物を取り込むこともできるようになります。口を触られることにも慣れてくるのですが、中には、まだ歯ブラシの受け入れが難しい子どももいます。歯ブラシで歯みがきをするまでには、まずは口のまわりを指で触ることから始め、慣れたら口の中を指で触り、それからガーゼで口の中をぬぐい、次に歯ブラシの感触に慣らしていくというように、段階的なステップを踏むことが望まれます。刺激に慣れないうちに歯ブラシで無理にみがこうとしても拒否反応が出やすく、赤ちゃんの時はからだを抑えてみがけたとしても、だんだん大きくなると知恵もついてきて、逃げる手段を覚えてきます(これもある意味では成長の証拠でしょうが)。無理やりの歯みがきは、親にとっても子どもにとっても負担の大きいものでしょう。

 もう一つは、むし歯予防は歯みがきだけではないということです。とくに乳幼児期は、歯みがきに頼るむし歯予防より、食生活をしっかり確立することでむし歯予防を考えたい時期です。生活リズムを整え、3回の食事をしっかり食べることで、おやつや甘味飲料(ジュースやイオン飲料も含めて)をだらだら与えないようにすることが大切です。糖分の多い飲食物の摂り方に気をつければ、そうすぐにむし歯にはなりません。上の前歯が生え揃ったら、夜寝る前に飲食してそのまま寝かしつけない(これは母乳や哺乳びんでのミルクも同様です)ことなども気をつけましょう。

 とはいえ、1歳4か月というとそろそろ乳歯の奥歯(第一乳臼歯)が生えてくる時期ですので、歯みがきをどうしたらよいかも心配ですね。幸い、歯ブラシを自分で口に入れるのには抵抗がないようですので、歯ブラシ自体への拒否はないと思われます。仕上げみがきの体勢や他の人にみがかれることが嫌なのかもしれません。子どもが1歳半から2歳ぐらいで歯みがきを嫌がるようになるのには、「自分でできる!」という自己主張が生まれてきたせいもあるでしょう。また、寝かせみがきは効率のよい仕上げみがきの方法ですが、嫌がる子どもを寝かせるだけでも大変です。まずは、子どもに歯ブラシを持たせて、お母さんも自分の歯ブラシを持ち、向かい合って一緒にみがいてみてはどうでしょうか。子どもが自分でみがいたあとで、「お母さんの歯もみがいて」と誘ってみたり、「○○ちゃんの歯も一緒にみがこうか」とお母さんが手を添えて歯ブラシを動かしながら仕上げみがきをすることもできます。歯ブラシを持ったまま立ち歩くと危ないので、必ず座らせて一緒にみがきましょう。そこからお母さんの膝の上に座ってくれたら大成功です。手を添えてみがくのも、ずっとやりやすくなります。

 また、必死に「みがかなければ!」と追いかけると、お母さんの顔も怖くなっていることがあります。おまけに肩に力が入りすぎると歯ブラシの当て方もつい強くなってしまい、歯ぐきに痛みを与えてしまうことも。まだ焦る必要はないので、お母さん自身ができるだけリラックスして子どもに接し、からだのマッサージをするなどして子どもをリラックスさせてから口の中を見ていくと、寝る体勢も受け入れやすくなるかもしれません。食べたら水か麦茶を飲ませる、もう少ししたらうがいを練習させる、などの補助的な口の清掃を行いながら、その子に合った歯みがきを徐々に身につけさせましょう。食生活に気をつけて、今は少しゆとりを持ちながら、乳歯がすべて生え揃う2歳半から3歳頃を目標に、歯ブラシによる歯みがきの習慣化を図っていきましょう。