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歯とお口のケア

Q. 3歳5か月。形成不全の歯の治療法は、フッ素のみですか? (2016.7)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳5か月です。幼稚園の歯科健診で「上の歯形成不全」と診断されました。1歳半健診の際、「エナメル質が少ない」「歯が欠けている」「白濁」と指摘され、3か月に1度、歯医者さんでフッ素を塗っています。「形成不全」という言葉は今回初めて聞きましたが、1歳半健診の時に指摘されていたことが「形成不全」ということなのでしょうか?永久歯でもエナメル質があるかないかはどうやったらわかり、ないとわかった場合、治療方法はあるのでしょうか。フッ素を塗っての強化のみでしょうか?今後の治療方法や検査方法など教えていただけたらと思います。家では朝晩フッ素入りの歯みがきジェル、仕上げみがき、最後にフッ素を塗っています。

回答者: 井上美津子先生

 歯は、口の中に生えてくる歯冠の部分と、歯ぐき(歯槽骨)の中で歯を支えている歯根の部分から成り立ち、歯冠部の表面を覆っているのがエナメル質です。エナメル質は、人体の中で最も硬い組織で、水晶に匹敵する硬度があります。

 エナメル質の形成不全は、遺伝性の疾患または歯の形成期に生じる何らかの原因で起こります。エナメル質の厚さが減少していたり、部分的に欠けていたりするようなものをエナメル質減形成、白濁・白斑や黄斑、褐色斑など石灰化の異常(歯の質の異常)がみられるものをエナメル質石灰化不全といいます。ご質問のお子さんの場合は「エナメル質が少なく、歯が欠けていて、白濁もみられる」とのことですので、減形成と石灰化不全が混在している可能性があります。1歳半健診の時の診断と、今回の幼稚園の歯科健診での指摘は、同じ内容だと考えてよろしいと思います。

 エナメル質の形成不全は種々の原因で生じ、遺伝性のエナメル質形成不全症では、乳歯および永久歯のすべての歯に形成不全が起こりますが、これはかなり稀な疾患です。一方、歯が顎の骨の中で形成される時期に何らかの問題が起こると歯の形成不全が生じることがあり、これは全身的な原因(栄養不良や全身的な病気など)で起こることもあれば、局所的な原因(外傷や顎顔面の炎症・感染など)で起こることもあります。ご質問のお子さんの場合は、乳歯の前歯ということですので、妊娠中から生後2〜3か月くらいまでの間に、何らかの原因で形成不全が起こったものと考えられますが、はっきりした原因が分からないことも多いようです。また、早産・低出生体重児には歯の形成不全が多くみられるという報告もありますが、このようなお子さんは、出生直後の栄養状態や全身状態が不良になりやすいためだと考えられています。

 エナメル質形成不全歯は、歯質が欠けていたり石灰化が不全なため、むし歯になるリスクが高く、また、一旦むし歯になると進行が速いことが危惧されます。形成不全が軽度な場合は、歯みがきやおやつ・飲み物などに気をつけ、フッ素を活用して、むし歯予防を図りながらそのまま経過をみていくことが多いですが、歯が大きく欠けている場合や歯質が脆くなっている場合は、治療が必要になることもあります。質問のお子さんの場合、乳歯のあいだは現在の対応でよろしいかと思います。永久歯の形成不全は、よほど歯の欠損が大きくないとエックス線写真でも診断できませんので、生えるまで待つしかありませんが、乳歯の形成不全の原因がそのまま永久歯の形成不全につながるものではありません。ただ、もし永久歯でも形成不全がみられた場合は、審美的な面も含めて歯の色や形を回復する治療が必要になることが多くなると思います。かかりつけの歯科医院で定期的に歯のチェックやフッ素塗布を受けながら、永久歯の生え換わりも含めて相談していくといいでしょう。