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歯とお口のケア

Q. 生後2か月で完全母乳ですが、私が虫歯治療をすることで、 母乳への影響はあるでしょうか? (2017.1)

  • (妊娠週数・月齢)2か月

現在、ほぼ完全母乳の生後2か月の乳児がいます。最近、私自身の歯が痛み、歯科医院に行こうかと考えています。その際に、例えば歯茎に薬を注入、麻酔やレントゲン撮影などをしたとして、母乳へ影響することはありますでしょうか? これだけは避けた方がいいということがあれば、教えていただきたいです。

回答者: 井上美津子先生

 歯科治療時のレントゲン(エックス線)撮影や局所麻酔は、母乳にほとんど影響を与えるものではありません。出産後2か月経っているのでしたら、母体の体力もだいぶ回復してきていて、授乳時間なども安定してきていると思いますので、早めに歯科治療を受けられた方がいいと思います。

 歯科で一般的に用いるエックス線撮影は、顎全体を撮影するパノラマ撮影で1枚0.02〜0.04mSv(ミリシーベルト)、口の中にフィルムを入れて歯を撮影するデンタル撮影で1枚0.01〜0.02mSvと放射線量も少なく(日本人の年間の自然被ばく量は約2mSvといわれています)、しかも最近のエックス線装置では散乱線も少ないため、歯や顎を撮影した場合に散乱したエックス線が乳腺などに達して、母乳に影響する心配はほとんどないと考えられます。

 また歯科治療に用いる局所麻酔薬は、その大部分が局所で吸収され奏効した後、局所分解されて肝臓で代謝、腎臓から尿中に排出されるものと考えられて います。通常の歯科治療で使用する局所麻酔薬の量も1.0〜1.8mLと少量ですので、母乳に直接影響する心配はほとんどないと思われます。それでも数%はそのままの形で排出されるともいわれていますので、心配な場合は歯科治療の前に授乳しておいて、治療後少し時間をおいて授乳するといいでしょう。

 もう痛みが出ているようですので、痛みが強くなったり歯ぐきが腫れてきたりして、痛み止め(鎮痛薬)や腫れ止めの薬(抗菌薬)を服用するときの方が注意が必要です。授乳中の薬の服用については、服用した薬が母乳に移行する可能性は高いので、市販薬を用いる場合も薬剤師によく相談しましょう。

 母乳は乳腺で血液から作られますが、体内に吸収された薬が血流にのって乳腺に達して母乳が作られる際に、多くの薬は薄まりますので、母乳に移行する量はわずかです。そのため、母乳を通して赤ちゃんに影響が出る可能性は低いと思われます。ただし一部の薬は、高濃度なまま吸収されて母乳に移行する場合もあるため、授乳をやめた方がいいと考えられています。歯科で一般的に用いられる薬はそれほど心配はありませんが、服用する薬については担当医や薬剤師と十分に相談する必要があるでしょう。