赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー病気・予防接種

病気・予防接種

Q. 母親の私が口唇ヘルペスです。私の口元を触った8か月の子が目をこすったら、角膜ヘルペスになりますか? (2018.1)

  • (妊娠週数・月齢)8か月

8か月の子です。3日前から私に再発性の口唇ヘルペスが出て、皮膚科で薬をもらい服用中です。気をつけてはいるのですが、夜間の授乳中に子どもが私の唇を触り、すぐにその手で目をこすることが3回くらいありました。角膜ヘルペスになってしまうのでは?と心配しています。感染した場合、症状はすぐにはでないものですか? あらかじめ眼科に行かなくてもよいですか?

回答者: 横田俊一郎先生

 口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)1型、2型による感染症です。HSVはありふれたウイルスで、40〜50歳代の人の90%近くは感染して抗体を持っていることがわかっていますが、最近は核家族化で感染の機会が減り、20~30歳代の人では約半数しか抗体を持っていないと言われています。しかし、かなりの人が感染する病気であることに変わりはありません。HSVは一度感染すると神経節の細胞の中に潜伏感染し、生涯人とともに共存するという特徴があります。潜伏したHSVは日焼けしたとき、発熱を伴った風邪を引いたときなどに再活性化し、口唇ヘルペスを代表として、潜んでいた神経に沿った決まった部分に水疱や発疹を作ります(「回帰発症」と呼びます)。しかし、これはすべての人に起こるわけではなく、再発しやすい体質を持った一部の人だけに起こる現象です。

 初めてHSVに感染したときの病型の大部分は「不顕性感染」で、まったく症状が現れない、あるいは普通の風邪と区別が付かないという病型です。次に子どもで多いのは「歯肉口内炎」で、舌やのど、口の周りに口内炎ができ、歯ぐきが赤く腫れて出血しやすくなり、高熱が続くという病型です。小児科の外来ではときどき見かける症例です。

 角膜ヘルペスという病型でHSV初感染の症状が出ることはまれで、角膜ヘルペスの大部分は回帰発症です。何回も再発し、治療しないで放置すると角膜が破れるなど重症化することもありますが、現在は抗ウイルス薬の点眼で比較的簡単に治療することができるので、心配しすぎることはありません。

 また、HSVは口唇ヘルペスの患部だけから感染するわけではなく、健康なときのお母さんの唾液の中にもときどき排出されていることがわかっています。ですから、お子さんへの感染の機会はいくらでもあるのです。もちろん、お母さんの口唇ヘルペスの患部を触った手でお子さんの目をこするのはできるだけ避けた方がよいでしょう。しかし、感染しても大部分は症状が出ない不顕性感染で、回帰発症が起こるか否かも感染してみないとわかりませんので、あまり神経質になることはないと思います。涙が多い、目を気にしてしきりにこする、目の周りが赤くなるなど、お子さんに何か変化があったときに受診すれば大丈夫です。