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ママ・パパの気持ち

Q. 2歳半の息子をもつ専業主婦。夫にも子どもにも必要とされていない気がしてむなしくなります。 (2019.4)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

 2歳半の息子がいる専業主婦です。夫が仕事人間で土日も家におらず、家事も子育ても自分ひとりでやっています。子どもはたまに父親がいるとはしゃぎ、私には邪険な態度に。夫もそんな息子に注意をするわけでもなく静観していて、お世話をしているのは私なのにとつらい気持ちになります。立ち会い出産のせいで夫は私を女性と見てくれなくなったのでしょうか? 夫にも子どもにも必要とされていない気がして、自分の存在はなんだろうとむなしくなります。夫に直接気持ちをぶつけるのも、仕事で疲れているのにと思うとできません。イライラもつのって、ときどき子どもにあたってしまい、情けなくて落ち込みます。

回答者: 帆足暁子先生

 こんなにつらい思いになっているのに、あなたはそれでも仕事で疲れている夫に直接気持ちをぶつけることはできないと思っているのですね。そして、そのためにあなたがさらにつらくなるというのは、本当にやりきれない思いになります。

 お子さんは2歳半ですから、約2年半あなたはひとりで家事も子育てもされてきたのですね。それなのに、夫にも子どもにもご自分が必要とされていない気がしてむなしくなっている。これは、本当に筋が通らない話です。この状況で、よく今まで頑張ってこられたと思います。これから、どうしていったら良いか一緒に考えましょう。

 まずは、お子さんについて考えましょう。
 子どもはたまに父親がいるとはしゃぎますね。なぜなら、子どもはたまにくる「お客さん」が大好きだから。新鮮でワクワクする感覚なのです。だから、独り占めしたくなることもあります。でも、あなたはお子さんの生活全般を守っていて、ずっといつも一緒にいてくれる心の安全基地なのです。一緒にいることが当たり前。まるであなたとお子さんでセットみたい。子どもにとって、父親は普段いなくても生活していかれますが(今のように)、でも、あなたがいなくなったら、お子さんは不安で生活することもできないくらい大変なことになります。お子さんは確実にあなたを必要としています。自信をもって大丈夫です。

 でも、少し気になること。お子さんが「たまに父親がいるとはしゃぎ、私には邪険な態度に」という部分です。先程書きましたように独り占めしたくなることはありますが、邪険な態度をするのは少しそのラインを超えています。もしかしたら、普段の生活の中でお子さんの要求を無理をしてでもできるだけ受け入れようとして、お子さんの言いなりに近い関係になってはいないでしょうか。その関係を続けると、子どもは自分の方が母親よりも立場が上だと錯覚してしまいます。親子関係の逆転です。もし、そうであれば、自我が強くなる今がちょうど修正するのに良いタイミングです。きっぱりあなたが上・・・つまり、お子さんが何か要求してきても、いつも受け入れようと無理をしなくて良いということです。簡単なこと。例えば、「ママ、これやって!」と言ってきたときに、やってあげられるときはやってあげてOKですが、家事をやっていたり、疲れていたりするときには「今、ママはこれをやっているからできないの。これが終わったらやってあげるわね」とあなたの状況をちゃんと伝えて、そして、子どもに待ってもらいます。大切なポイントは、子どもが泣いて暴れても穏やかにゆっくり1回説明したらあとは取り合わないこと、そして、必ず「後で」やってあげることです。つまり、何でも子どもファーストではなく、あなたの状況をちゃんと子どもに伝えて、子どもにも状況を判断して待つ体験をしてもらえば良いのです。母親も子どももお互いがファースト。一緒にいて幸せであることが、子どもにとっても一番嬉しいことなのです。

 それから、立ち会い出産のあとの夫とあなたの関係を考えましょう。
 あなたを女性として見てくれなくなったと思えるようなことがあったのでしょうか。それとも、ご自身でそう思いこんでしまったのでしょうか。確かに人間の一番動物的な場面が出産かもしれません。立ち会って気絶した男性もいます。立ち会い出産でなくても、「女性としての魅力が無くなった」と言われた女性もいます。たぶん、出産を契機に「女性」から「母親」へと進化するのかもしれません。 

 実は、結婚して一緒に生活をしながら、相手を女性として恋心をずっともち続けるのはなかなか難しいものなのです。たまにくる「お客さん」にワクワクするのは子どもばかりではありません。一緒に生活していくことが当たり前になっていくと、それが日常という「普通」になりますし、魅力的に思ってもらいたいという願いにかけるエネルギーも無くなっていきます。それはワクワクしなくなっていくことでもありますが、日常がずっとワクワクドキドキしていたら疲れてしまいますから、穏やかで普通の生活がベースになる必要はあるのです。そういう中で、むなしく思わない「夫とあなた」の関係のためにはどうしたらよいでしょうか。

 ちょうど今月の新聞の「折々のことば」に「どうか――愛をちょっぴり少なめに、ありふれた親切をちょっぴり多めに」(カート・ヴォネガット)の言葉が紹介されていました。その解説には、結婚生活を「愛」で通そうとすれば真剣であればあるほど「どたばた喜劇」のようになるので、それよりも「だれかを大切に扱い、そして相手もわたしを大切に扱ってくれた」という体験をささやかながらも積み重ねることが大切だということが書かれていました。そういう関係になるためには、あなたが夫を大切にするだけではなく、あなたの「大切にされたい思い」を伝えることも必要かもしれません。ラインやメール等のネットを使ったり、手紙をしたためたりして、夫の負担にならない形であなたの思いを伝えることから始めてみませんか?そのときのポイント。淡々とあなたの気持ちを正直に伝えるだけに留めること。決して夫が責められているという気持ちにならないような文章を考えてください。

 それから気になったことがあります。

 あなたが「夫にも子どもにも必要とされていない気がして、自分の存在はなんだろうとむなしくなります」ということ。「夫にも子どもにも必要とされていない」としても、あなたは「あなた」であるだけで特別な存在なのです。「ひとりで頑張って家事も子育てもして、仕事で疲れた夫には気遣いをする」そういうあなたはすてきな人です。あなたがいないと夫は仕事に集中できないでしょうし、お子さんだって安心して育ちません。つまり、あなたは必要とされているのに「必要とされている」実感がない、ということなのです。だったら、「あなたが必要!」と夫と子どもに十分意識してもらうために、しばらく実家に帰ってみますか? あるいは、あなたも仕事を始めてみますか? それもひとつの方法です。

 あなたが「必要とされたい」と今、思っているのは事実ですし、そう思うだけの理由がこれまであなたが育ってこられる中であったのだと思います。それも大切なあなたの過去。
 でも、そろそろ「必要とされるからむなしくない」のではなく、「私は私だからむなしくない」という自分にもチャレンジしてみませんか。私の人生の主人公は私。夫の視点から自分を見るのでもなく、子どもの視点から自分を見るのでもなく、自分の視点で自分を見る、ということをするだけでも自分を人生の主人公とすることができます。そうすることができるようになったら、きっとあなたはむなしさから抜け出せるのではないかと思います。
 自分の気持ちをこうして表現してSOSが出せるあなたなら大丈夫。時間がかかってもきっと実現できます。

 それでも、ひとりでやっていくのはきついときもあります。そういうときにはあなたが信頼できる友人や専門家を頼りましょう、自分のために。それで良いのです。