赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバーことば

ことば

Q. 言葉の理解に遅れがある2歳10か月の子。パニックへの対応とまわりの人の理解を得るにはどうしたらいいでしょう? (2019.7)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳10か月の息子がいます。2歳半の健診で言葉がほぼ出ておらず、私自身も普段から気になることがあり、心理相談と医師の診察を受けました。検査の結果、言葉の理解は1歳半、見て理解することは2歳レベルということで、全体として1歳程度の遅れがあると言われました。療育を勧められましたが、いまは空き待ちで、今月から保健センターの教室に行く予定です。私自身は、息子の言葉の理解の遅れを痛感しているのですが、まわりの人たちは、「そのうち喋るよ」などと言ってあまり理解を示してくれず、夫に相談をしても真剣に受け答えしてくれません。息子のことは自分ひとりで理解していかねばならないのかなと感じています。そして、最近買い物やお出かけ、通院などで苦労が絶えません。自分の要求が通らないと、泣きわめいてパニックを起こしたり、嫌なことがあると、自分の体をバンバン叩きます。説明しても、こちらの言うことを理解していないようです。パニックや体を叩くときはどう対処したらいいでしょうか?また、言葉の理解が遅れていることに関して、まわりの人たちの理解を得るには、どうしたらいいでしょう?

回答者: 帆足暁子先生

 2歳代の子どもは自我が育ち、反抗期に入ります。自分の要求が通らないと泣きわめいたりパニックを起こしたりするので、出かけるととても苦労します。お子さんは理解することに1歳程度の遅れがあるとのことですから、理解して我慢しようとする気持ちよりも、要求を通そうとする気持ちの方が強くなるのだと思います。

 さて、お子さんがパニックを起こしたりしたときや、体を叩くときの対処ですね。「原因」と「対策」というパターンで問題解決を考えてみましょう。

 あなたは「原因」をちゃんとお子さんの「要求が通らない」「嫌なことがある」ときとわかっています。では、「対策」はどうしたら良いでしょうか。一番簡単な方法としては、「原因」が起きなければ問題は起こりません。でも、子どもの「自分の要求が通らない」「嫌なことがある」場面は、生活していくなかで必ず起きてきます。例えば、高熱を出して苦しがっているときにはどんなに子どもが嫌がっても、医者に連れて行きます。そうしなければ、子どもの生命が危険かもしれないからです。

 次に、「泣きわめいてパニックを起こしたり、嫌なことがあると、自分の体をバンバン叩く」という親にとって困る子どもの行動を変えていくことを考えます。つまり、「どんなに泣きわめいてもパニックになっても、ダメなことはダメなんだ」と子どもが納得していくことです。なぜなら、子どもは要求が通る可能性に向かって「泣きわめいたりパニックを起こしたり、自分の体をバンバン叩く」からです。それをしても効果がないということがわかることで、その手段を手放すことにつながります。

 それには、もちろん、言葉で説明して理解していくという過程も大切ですが、それよりも大切なことは、子どもの体験なのです。つまり、「子どもが要求を通そうとする」→「親にだめと言われる」→「子どもは泣きわめいたりパニックになる」。

 ここからが別れ道。大別すると「仕方なく、要求を通す」か、「要求を通さない」か。子どもは体験重視なので、親がどのような気持ちであっても「要求が通る」か「要求が通らないか」の結果論で判断していきます。そして、その行動パターンを学習します。

 ですから、親が怒りながら仕方なく「要求を通す」とそれを学習しますから、どんどんエスカレートをして、要求が通らない場面では泣きわめくことになります。反対に、「要求を通さない」と、すぐではありませんが、次第に学習していき、要求が通らなくても無駄な「泣きわめいたりパニックになったりする」ことはしなくなります。もしかしたら、バンバン叩く行動は、すぐに止めにきてくれたり、注意をむけてくれたり、何か子どもにとっての効果があったのかもしれません。

 そして、泣きわめいたり、自分の体をバンバン叩いているときのお子さんへの対応は、叩いているお子さんをまるごと抱え込んで落ち着くまでぎゅっとハグし続けます。力が強くても、まだ2歳代。今ならできます。そして、落ち着いたらハグしていた力を抜いて、優しいだっこにかえながら「よくがまんできたね。えらかったね」とお子さんをほめてください。次第に、「がまんする」という体感覚を学習したり、「がまんできる自分」イメージに合う自分に育っていきます。

 最後に、まわりの人たちの理解を得るにはどうしたらいいか、です。

 あなたは、お子さんの発達の気がかりにちゃんと気づいて、お子さんの言葉の遅れを痛感しているのに、まわりの人たちが理解してくれないということ。あなたは、お子さんの言葉の遅れをまわりの人たちに理解してもらいたいということでしょうか。かんたんに「そのうちしゃべるよ」と言われたくないという思いもあるかもしれません。

 もし、そうであれば、まわりの人たちの理解は、今は難しいかもしれません。でも、お子さんが3歳、4歳を越えて、他のお子さんとの違いが明確になったら、自然に理解をしてくれる可能性はあります。それから、あなたが、保健センターや療育に通うようになれば、理解しやすくなると思います。つまり、あなたが心配しすぎている、ということではなくて、専門家もその必要を理解しているということだからです。

 大切なことは、今回、あなたがご相談されたように、ご自分がどうしたいか、まわりの人にどうしてほしいか、ということがわかることです。それが明確になれば、どうしたらいいか、ということをいつも考えることができます。あなたを支援しようとしている人たちに、あなたを支えてもらうことができます。

 これからも何かあれば、いつでも発信してください。