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母乳とミルク・授乳

Q. 2か月の子をもつ母。乳首に傷がつき授乳がつらいです。 (2019.12)

  • (妊娠週数・月齢)2か月

生後2か月の男の子を混合栄養で育てています。左の乳首の先端に傷ができ、数日前からとても痛くて授乳できないほどです。近所にある母乳相談に行ったところ、その場で乳首を深くくわえさせると大丈夫でした。ところが家でやると上手くできず、やはり痛いのです。傷のある左のおっぱいだけ、授乳をお休みしてもよいでしょうか。お休みする場合でも、搾乳はするべきですか。母乳をあげたい気持ちもあるのですが、痛すぎるので、いっそのことミルクでの授乳だけにしてしまおうか悩んでいます。

回答者: 市川香織先生

 生後2か月の母乳哺育で、片側の乳頭に傷ができてしまい痛みがあるのですね。痛くて乳首をくわえさせることもできない状況なので、いまはその痛みをまずは和らげたいですね。助産師が開業している母乳相談に行った際は、乳首を深くくわえてもらうことで痛みはなかったということですから、乳輪までしっかりくわえられれば、赤ちゃんの吸う力がかかっても、傷に影響することがなかったのでしょう。でも、自宅に帰ってから毎回同じように深くくわえさせるのも難しいですし、赤ちゃんも毎回同じようには吸ってくれないのでしょう。また、吸ってくれなければ母乳がたまってきますので、乳輪までくわえようとしても赤ちゃんの口が滑ってしまい、余計に乳首の傷に負担がかかってしまうということもありますね。

 痛すぎてくわえさせるのもつらいといういまの時期は、傷を治すのが先決です。そのためには、左側だけ直接吸ってもらう授乳を数回または1日程度、一時的にお休みするのがよいでしょう。ただし、その際は3時間以内に搾乳をして、乳房が張りすぎないようにします。搾乳は乳輪部が柔らかくなり、乳房が軽くなったなと思う程度行うとよいでしょう。その間、乳首の傷は保湿剤を塗って潤いを保ち、傷がこすれたりしないように保護しておきます。保湿剤としては、赤ちゃんが口に入れても問題のないラノリン(羊毛から抽出した保湿成分)などがおすすめです。保護のために、その上からラップを当てておくと楽になりますが、感染を招く場合もあるので長期には行わず、これは摩擦を防ぐ一時的な対応と考えましょう。

 また、母乳自体にも傷を治す効果があります。清潔を保つことは必要ですが、毎回の授乳で清浄綿などを使って母乳や分泌物を拭き取ってしまうと、天然の保湿成分、治癒成分まで拭き取ってしまうことになりますので、清浄綿はやめた方がよいでしょう。最近では、乳頭の傷にもハイドロジェルドレッシングを使う方法も出ています。これは乳頭全体を覆って傷の治りが早いと言われています。いろいろな対応がありますが、入手しやすい方法で、まずは傷を治しましょう。

 傷が治り痛みが軽くなったら、赤ちゃんの吸いつかせ方を工夫することが、今後の予防にもなります。「また傷ができるのでは」と思うと吸ってもらうことをためらってしまい、そうすると赤ちゃんの吸いつきも浅くなり、また傷ができてしまうことになりかねません。吸わせるときは、大きな口を開けてもらって、赤ちゃんの口と乳頭が正面から向き合うようにして、しっかり奥までくわえてもらいましょう。これまでの抱き方だと同じ場所に傷ができる可能性もあります。脇抱き(フットボール抱き)にしてみるなど、違う方向から吸いつかせるような抱き方の変更も有効な場合があります。ぜひ試してみてください。

 痛みがあると、母乳そのものを続ける気持ちも折れてしまいますよね。しかし、お母様の体調が回復し母乳の分泌量も増えてくる時期でもありますので、何とかトラブルを乗り切って、育児を楽しんでいただきたいなと思います。もちろんミルクもうまく利用しながら、お母様自身が快適で赤ちゃんと楽しく向かい合えるとよいですね。