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歯とお口のケア

Q. 反対咬合の1歳9か月の息子。上唇小帯切除術を勧められました。 (2019.12)

  • (妊娠週数・月齢)1歳7か月

1歳9か月の息子は反対咬合なのですが、歯科医から上唇小帯が強いことを指摘されました。息子の反対咬合の原因として、骨格上の問題はないようで、医師から「上唇小帯を切除するだけで反対咬合が治ることもある」と、早めの上唇小帯切除術を勧められました。ネットで調べると、永久歯が生えてくるころに切除することを勧めている記事が多く、正直戸惑っています。反対咬合がある場合は、早めに切除することで反対咬合が治るということが本当にあるのでしょうか?

回答者: 井上美津子先生

 乳歯が生え揃う3歳頃までは、上唇小帯の付着位置や形が変化しやすいので、1歳代で上唇小帯に異常がみられても、通常は様子をみることが多いと思われます。ただ、太く短い上唇小帯が上の前歯の歯と歯の間に入り込んでいて、上唇の動きを妨げていたり、上の前歯を十分に磨けないときなどには、早めに切除を行うこともあります。

 上唇小帯は、上唇と歯槽部粘膜(歯肉)を結びつけている帯状の線維の束です。上の前歯が生え始めたころには、歯肉側の付着部位が歯と歯の間に入り込んでいることが多いものですが、乳歯の萌出が進んで歯を支える骨(歯槽骨)や顎の骨も発育してくると、だんだん付着部位が上方に移動して、幅も狭くなってきます。この発育変化が十分に起こらないと、上唇小帯の付着位置の異常や肥厚が生じます。

 上唇小帯異常の症状としては、小帯が前歯の間に入り込むように付着していたり、前歯の間が開いて小帯が歯の裏側の歯肉にまでつながっていたり、小帯が肥厚して口唇への移行部で扇状に広がっていたりします。そのため、前歯の間が開いたり(正中離開)、上唇がうまく動かないことで発音の異常や歯磨きの困難が生じることがあります。

 乳歯の前歯はもともと歯と歯の間に隙間がみられやすいものなので、正中離開のために切除手術を行う必要はなく、通常は永久歯に生え換わるまで様子をみます。ただし、小帯の付着異常のために上唇の動きが著しく妨げられていて、唇が閉じにくいなどの機能的な問題や歯磨きの困難が生じている場合は、乳歯列のうちに切除手術を行うこともありますが、ごく少数です。質問者の方がインターネットで調べられたように、歯科では通常、永久歯に生え換わった後も上の前歯の間に小帯が入り込んでいて、正中離開が顕著な場合に切除をお勧めします。

 上唇小帯の付着異常と反対咬合との関係については、あまり明確なエビデンスが示されていません。上唇小帯のために上唇の緊張が非常に強いと、上顎の発育に影響する可能性もありますが、これはかなり稀なことと思われます。また、1歳9か月ではまだ乳歯の奥歯が生え揃っていないため、これから咬合状態も変化する可能性があります。骨格上の問題がないようでしたら、まずは乳歯が生え揃うくらいまで経過をみていって、それから判断してもよろしいかと思います。