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母乳とミルク・授乳

Q. 生後10日の子の母。搾乳してはいけないでしょうか? (2020.1)

  • (妊娠週数・月齢)1か月

生後10日ほど経ちましたが、母乳育児について悩んでいます。出産した産婦人科では、乳が張っても搾乳をしないようにと言われました。私はかなり母乳が出るほうなのですが、赤ちゃんはまだ吸うのが上手ではないようで、吸うまでに時間がかかり、十分に飲めていないようです。毎回授乳のたびに、母乳が残っていることを感じています。それなのに、次の授乳まで絞ってはいけないっていうのがとても苦しいです。本当に搾乳はしてはいけないのでしょうか?1週間健診では、1日の体重増加が7グラムで、ちゃんと飲めていないと言われました。

回答者: 市川香織先生

 授乳後も母乳が残っている感じがするのに搾乳しないよう言われており、どうしたらいいのかお悩みなのですね。「かなり母乳が出るほう」ということですので、母乳の分泌が多いタイプなのですね。母乳は出にくい人も悩みますが、出すぎる人にとっても対応が難しく、悩みのたねですね。

 出すぎる人にとっては、搾乳という刺激が、さらに母乳を分泌させてしまうことになるため、なるべく搾乳をしないようにと言われることが多いと思います。おそらく産院では、お母様が搾乳をするともっとつらくなってしまうと考えて、それを避けるために搾乳しないよう指導されたのではないかと思われます。でも、分泌が増えていく産後10日前後で搾乳をせずに過ごすのは、身体もつらいですよね。

 また、赤ちゃんは1日の体重増加が7グラムということなので、母乳を十分飲みとれていないようですね。この時期の赤ちゃんは、母乳をよく飲めていると1日20~30グラムずつ体重が増えていくと言われています。お母様は、母乳がたくさん作られて出すぎるくらいなのに、赤ちゃんが飲めていないのはなぜだろうと思いますよね。

 母乳が出すぎる、つまりたくさん作られると、乳房が張ってしまいます。乳房全体が張ると、赤ちゃんがくわえる乳輪のあたりまで張ってしまうことが多いのですが、乳輪が張っていると、赤ちゃんの口が滑ってしまい、うまく吸いつくことができなくなってしまうことが多いのです。しかし、母乳はたくさん作られているので、お母様の乳頭からはあふれるように母乳がでてきます。赤ちゃんは少々おちょぼ口になっても、このあふれる母乳を飲むことができるので、授乳のときには乳頭を探して口をあけ、乳頭の先だけ吸ってしまいます。これだと時間の割に飲む量は少ないので、実はあまり飲めていなかったということになってしまうのです。吸うまでに時間がかかっているのも、乳輪部をうまくくわえられていないせいもあるかもしれませんね。
 
 ですので対応策としては、前搾りといって、赤ちゃんに吸ってもらう前に乳輪部の張りを取る程度に搾乳し、乳輪をくわえやすいようにしてから赤ちゃんに授乳するという方法を取るとよいでしょう。そのときには、搾乳する母乳は瓶などに取る必要はありませんので、タオルなどに直接搾りだし、お母様自身が「少し圧が抜けたな、乳輪は赤ちゃんの口でくわえられそうなくらい柔らかくなったな」と感じる程度にします。そして、赤ちゃんに大きな口をあけてもらい、しっかり奥までくわえてもらいます。赤ちゃんがうまくくわえられたときには「ぴったりはまった感じ」という表現をされる方もいますので、初めはうまくいかなくても何度かトライしているうちに、その感覚がわかると思います。

 また、飲み始めたら片方で満足いくまで飲んでもらってかまいません。母乳は飲み始めと終わりで成分が変わります。初めはさらっと、終わりは脂肪多め、すなわち母乳フルコースです。メイン料理に行く前に離してしまうと、体重増加にも影響しますし、左右の乳房を替えて最初のさらっとした母乳だけをたくさん飲んでも、すぐにおなかがすいて泣いてしまいます。片方をしっかり飲んでもらい、自分から口を離したら終わりで大丈夫です。そのとき、飲んでもらわなかったもう片方が張ってつらければ少し楽になる程度だけ搾乳します。授乳中に、こちらからもぽたぽたと母乳があふれていることと思います。このときあまり搾乳しすぎないことがポイントです。次の授乳は今回飲まなかった方を同じようにあげましょう。片方ずつを1回おきに満足いくまでたっぷりとあげていくくらいのペースに落ち着けば、母乳を作る量も徐々にコントロールされてきます。

 母乳が作られすぎる人は、しこりや乳腺炎などにも注意が必要です。授乳しても乳房の張り感が残ってしまうことがないよう、授乳のときに乳房の下にタオルを丸めて支えるようにする、赤ちゃんの吸いつく方向を変える(抱き方を変える)など、いろいろ試してみましょう。いつも同じところの張りが取れない、しこりや痛みがある場合は、早めに母乳外来や地域の母乳育児相談をしている助産院などに相談して、みてもらうとよいでしょう。

 しばらくは大変ですが、ペースがつかめてくればお互い楽になると思います。いろいろ試してみてくださいね。