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性格・親のかかわり・育て方

Q. 下の子が生まれてから上の子を怒ることが増えてしまいました。 (2020.4)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

現在2歳8か月の娘と生後1か月の子を育てています。下の子が生まれるまでは、危険がない限り、極力怒らないで子育てをしてきました。ところが下の子が生まれてから、怒る頻度が増えてしまっています。娘はイヤイヤ期ということもあり、なかなか言うことを聞いてくれません。できるだけ娘を優先にし、気持ちを受け止めつつ接しているつもりですが、娘がふざけたり無視したりが続くと、どうしても怒ってしまいます。娘のことはかわいくて愛おしいのに、怒ってしまう自分が嫌で罪悪感を感じます。また、私が怒ることで、娘の精神状態や今後の成長に悪影響がないかと心配になります。どうしたらいいでしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 娘さんのことはかわいくて愛おしいのに、怒ってしまうのですね。

 「かわいくて愛おしい」というあなたの気持ちは、あなたが娘さんの存在に抱いている包み込むような大きな親の愛情です。それと「怒ってしまう」という娘さんへの対応は、実は別のことです。怒る対応は怒る気持ちから生じますが、あなたは娘さんの言動に対して怒っているのであって、娘さんの存在に対して怒っているわけではないからです。

 少し、イヤイヤ期について整理してみます。
 イヤイヤ期の子どもは、自分を主張することに特徴があります。親への依存から自立に向かっていく一歩です。でも、この時期の子どもは何が良くて何がいけないことなのかわかりません。自分が思った通りに行動したい、という姿が第1段階です。この段階で、子どもにこうしてほしいと思う親とぶつかります。そして、次の段階で、子どもは自分の言動に対する親の反応を見て、価値観や倫理観を学んでいきます。親の意向を受け入れるということではありません。仕付け糸のように、親の反応が子どもの記憶に残って、さまざまな体験を経るうちに自分の価値観や倫理観になって、それが言動につながるのです。仕付け糸も本縫いができれば抜いていくのと同じです。子どもの中で熟成されるのには時間がかかります。でも、イヤイヤ期は子どもが成長するための大切な発達課題です。

 この段階は親の対応に工夫が必要です。実は、子どもの主張は、子どもの視点で聞いてみると怒る気持ちが消えていくことがあります。子どもにも子どもなりのちゃんとした理由があるからです。一方、親にもちゃんとした理由がありますね。ですから、子どもの主張を聞きながら、親の気持ちを伝えることも大切です。どうしてそうしてほしいのかを子どもの視点を踏まえて、親の立場から説明します。あるいは子どもにどうしたらよいかを考えてもらうこともよいかもしれません。子どもに任せることで失敗から考えてもらうのもよい方法です。いずれにしても、イヤイヤ期にはこのような、子どもを尊重する姿勢が、子どもを成長させ、親子関係を深める良い対応なのです。試していただけると、娘さんが精神的に傷つくことなく、成長に良い影響がある実感を持つことができます。

 それから、娘さんにはもう一つ、自分を主張しなければならない理由があります。下のお子さんの誕生です。あなたは、下のお子さんが生まれるまでは「危険がない限り、極力怒らないで子育て」されてきましたから、お子さんの気持ちを最優先して育ててこられたと思います。でも、下のお子さんが生まれたら娘さんを最優先することができません。大人には当然わかることですが、子どもにはわかりません。不安になって、何とかこれまでの親との強い結びつきを取り戻そうとします。それが娘さんの「ふざけたり無視したりが続く」姿です。きっと、あなたに怒られることで、あなたの気持ちが娘さんに強く向けられるのでしょう。娘さんが求めているものは違うのに、気持ちのずれが生じてしまいます。

 こういうときには、娘さんを「子ども扱い」ではなく、あなたのお手伝いができる「大きくなった子ども」扱いにすると、このずれがすっと消えることがあります。ずれ行動は、娘さんの不安からきているので、あなたに存在が認められて安心できれば、その行動は必要なくなるからです。

 確かに、子どもは怒られると悲しくなります。
でも、あなたはご自分を嫌になったり、罪悪感を持ったりする必要はありません。子どもの発達課題や、下の子どもが生まれたという環境から生じる娘さんの行動を、説明してくれる人がいなかったからです。

 ですから、罪悪感よりも、あなたが子どもの発達や娘さんの置かれた環境を理解しようとすることのほうがずっと大切です。それができれば、娘さんとあなたの関係はもっと成長した深いつながりを持つことにつながります。何よりも娘さんを「かわいくて愛おしい」というあなたの気持ちがあるから、あなたなら大丈夫。自信をもって、次の段階に進んでください。でも、難しいと思ったときには、ぜひ信頼できる専門家を頼ってください。あなたも楽しいと思って子育てをすることが娘さんにも大切だからです。