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性格・親のかかわり・育て方

Q. 私に噛みついたりたたいたりする4歳の息子。 (2020.11)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳になる息子は、恥ずかしいときや、注意されたり自分の都合通りにいかないときなど、人目を気にせず私に噛みついたりたたいたりしてきます。噛む力も強く血が出るほど噛みます。やめてと言ってもたたき続けます。人の目を気にする私は、その場では怒らず、「やめて」と言いますが、後で二人きりになったときにすごく痛かったこと、人を噛んだりたたいたらだめだということを、怒りながら強い口調で叱ってしまいます。しかもダラダラと言い続け、時にはヒステリックになることもあります。私は外出の際や、自分の友だちと会うときは、人の目を気にし過ぎて、子どもには細々とした注意をしてしまいます。私の接し方が子どもの発達に影響を及ぼさないか心配です。

回答者: 高橋惠子先生

 4歳児が母親に噛みついたり、たたいたりするのは、子どもの精いっぱいの母親への「訴え」だと受けとめる必要があります。
 子どもが訴えているのは、自分のことをわかってほしい、母親が望むようなよい子になれない、という気持ちを受けとめてということです。この願いに対して、母親は「人に噛みついてはいけない」「痛いから噛まないで」と説教で対応しています。ここでは母子の気持ちが大きくずれていることを理解してください。お母さんが、自分の「訴え」が一向に通じていないお子さんの悲しみをわかることが、問題解消の糸口になると思います。

 まず、問題解消のために必要なことは「完璧な母親になること」をやめることです。完全なお母さんになりたい、完全な母親の子どもにふさわしい「よい子」であって欲しいと望むことが、「外出の際や、自分の友だちと会うときは、人の目を気にし過ぎて、子どもには細々とした注意になってしまいます」という、子どもに無理で、無駄な、要求をすることにつながっていると思います。子どもに要求している「よい子」は、そのことで立派なお母さんをしている人だと、自分が世間から高く評価されたいからではないかと、振り返ってみてください。4歳児がたくさんのいたずらや失敗をし、親のいう通りにならないのはあたり前のことです。すでに4歳児は自己を発達させていますので、自分が言いたいこと、自分がしたいことがいっぱいあるのです。これがよく発達している4歳児の姿です。このような4歳児にふさわしいお母さんであるためには、少なくとも次の3点について心がけてみてはいかがでしょう。

1.ありのままのお子さんを、受けとめましょう。そのために、お子さんのすばらしい、微笑ましい成長を数えあげてみるとよいでしょう。困ったなと思うことも数えましょう。ノートにメモしてみるのもよいでしょう。思わぬ気づきがあるかもしれません。そして、ありのままの子どもをかわいがり、抱きしめましょう。失敗してしまう子どもも許してください。そして、お子さんがたくさんの笑顔を見せるような日常生活を心がけてください。「ぼくは、お母さんの望むようなよい子なんかではない」「お母さんの望むようなよい子になりたくない」と、お子さんはあなたに噛みついてまで「訴え」ているのですから、噛みつくことを叱るというのでは、少しも子どもの切実な気持ちを受けとめたことにはなりません。

2.完璧なお母さんになりたいと一所懸命になると、どうしても育児を自分一人で抱え込んでしまいます。いま、アロマザリング(他母養育)が注目されています。これは子育てに母親以外の複数の人が加わることをいいます。アフリカでは「子どもひとりが育つには一つの村が必要だ」というのだそうです。子育ては母親ひとりでするのは無理なのです。専業の母親がもっとも育児ストレスを感じているという調査報告があるほどです。家族、友人やその家族、教育施設(保育所や幼稚園)での子どもたちや保育者、公的な施設や催しで出会う子どもや人々などに人間関係を大きく広げて、子育てに参加してもらう人を探し、その人たちにまかせたり、知恵をもらってください。アロマザリングの精神は大切なのです。

3.完璧な母親を目指していると、どうしても母親は子ども中心の生活を送りがちになります。お母さんになることを選んだ人であっても、自分自身のための時間を持ち、自分自身の人生の目標を持って欲しいと思います。子どもが喜んで母親の膝に乗ってくれるのはわずか数年のことです。親と子はそれぞれの別の長い人生を行く旅の仲間だと考えてはいかがでしょう。親子という関係は生涯続くのですから、親も子も年齢を重ねながら成長していくという楽しみを持ちたいものです。そのことによって、子どもは親を別の人生を行く頼もしい仲間だ、時には先輩だと思うことでしょう。私たちは人生百年時代を生きているということを考えてみてはいかがでしょう。