赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバーママ・パパの気持ち

ママ・パパの気持ち

Q. 1歳の子を保育園に預けることに不安を感じます。 (2021.2)

  • (妊娠週数・月齢)1歳0か月

育休が終わるので、1歳の子を保育園に預けようと考えています。経済的に働かないと厳しいので選択の余地はないのですが、1歳で母親と離れて保育園に行くことについて、子どもの負担が一番大きいという話をネットで読み、心が揺れています。どうにか生きていけるくらいのお金があるのであれば、子どもにつらい思いをさせてまで働かなくてもよいのでは?と悩んでいます。生まれる前までは、1年もそばにいられたら十分と考えていましたが、あまりのかわいさに私自身が寂しいというのも、悩んでる要因のひとつです。保育園に預けたとして、子どもの寂しい気持ちをフォローするにはどうしたらよいのでしょうか? なかなか覚悟が決まりません。どう考えればしっかり覚悟できるようになるでしょうか。

回答者: 高橋惠子先生

 1歳児を保育園にお願いするのは、子どもにとっても、母親にとっても、よいことだと思います。乳幼児のお母さんたちの多くが、保育園に預けると子どもがかわいそうではないか、発達にとってよくないのではないかと、心配します。しかし、このような心配は無用だという実証的な証拠がそろってきました。

 まず、保育園は子どもの発達にとってきわめて有効な場所だということを理解しましょう。保育園の特徴は主に2つあります。第1は、乳幼児の扱いについて特別に訓練された専門家(保育士)がいること、第2は、子どもの仲間が大勢いることです。高い能力を持って生まれるヒトの乳幼児は、親とのつき合いだけでは、刺激が少なく退屈してしまいます。1歳を過ぎると子どもの好奇心も行動も一層活発になりますので、この問題は深刻です。これに対して、保育園には子どもに有効なカリキュラムや教材が準備されています。年齢に合った保育内容を考え、教材を工夫し、上手に対応してくれます。したがって、保育園児は家庭児(親だけが育児をしている子ども)に比べ、心の発達がより順調であることがわかっています。加えて、保育園には子どもの仲間が大勢います。子どもは子どもが大好きですが、どうつき合えばよいかを知るには「子ども経験」が必要です。保育園ではこの経験が十分にできるというメリットがあります。

 このような事実を理解した上で、必要なのは、母親の勇気、決心だと思います。「あなたの子どもは、あなたの子どもではありません」。北欧のデンマークで出産したMさんは、出産直後にデンマーク政府から届いたこのメッセージに強い衝撃を受けたそうです。「あなたの子どもには自由と人権があり、両親の所有物ではありません」とメッセージは続き、子育てについての〝公助〟の仕組み(子どもや親を支える福祉制度とその使い方)が詳しく説明されていたそうです。このように、子育ては親だけでするものではなく、社会のいろいろな人が協力してするのがよいというのが、世界の常識になっています。それは、これについても支持する実証的な証拠がそろってきたからです。

 保育園は子どもの発達を支援しますが、同時に、母親を育児から解放してお母さんである女性の発達をも支えているのです。つまり、育児や保育の一部を保育園に助けてもらえるようになったのです。子どもはかわいく離れがたいでしょう。しかし、母親であることは、女性の人生のすべてではありません。人生100年時代です。育休明けは、母親がこれからの数十年の人生をどのように暮らすかを考えるよい時機だと思います。親子のつき合いもこれからが長いのです。自分の人生をしっかり歩いている母親を、人生の先輩として子どもは誇りに思うことでしょう。

 最後に、もしも保育園生活を始めるのであれば、心がけたい2点をあげましょう。
 第1は、保育園への送迎の際に心がけることです。朝は時間のゆとりをもって送っていきましょう。保育士と親とが笑顔で言葉を交わすことが重要です。それによって、子どもは保育士が親と仲よしで、この場所は安心な場所だとわかるからです。そして、お迎えの再会時も重要です。子どもが親を見て喜んで駆け寄ってくるかで、1日の様子がわかるはずです。
 第2には、子どもとの時間を作ることを心がけましょう。夕方は忙しい時間ですが、保育園で1日がんばったね、偉かったね、とねぎらってください。そして、親子ともがんばったのですから、休日には密な時間を作るとよいでしょう。親子関係で重要なのは、量より質だからです。