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歯とお口のケア

Q. むし歯予防のためのフッ素塗布は、いつから始めればよいのでしょうか? (2021.10)

  • (妊娠週数・月齢)1歳7か月

1歳7か月の娘は最近奥歯が3本生えて、4本目が顔を出そうとしています。むし歯予防のために、フッ素塗布を早いうちからするとよいらしいと、ママ友から聞いたのですが、何歳ぐらいになったらできるのですか? 子どもがやっても体に悪い影響はないのでしょうか? まだ子どもを歯医者さんに連れて行ったことがないのですが、どこの歯医者さんでもやってくれますか? かかりつけとなる歯医者さんを探して、相談してみたいと思っているのですが、歯医者さんを選ぶポイントなども教えていただきたいです。

回答者: 井上美津子先生

 フッ素(フッ化物)の応用は、歯科においてむし歯予防の効果が実証されている予防法です。全身応用や局所応用の方法がありますが、日本では歯面塗布や洗口、歯磨き剤への添加などの局所応用が主体です。フッ素の歯面塗布は、フッ素が歯の表面(エナメル質)に取り込まれることで、エナメル質の結晶を強化して酸に溶けにくくしたり、石灰化を促進するため、むし歯予防に効果を発揮すると考えられています。また、生えたての歯の方がフッ素の取り込みが多いので、効果的であることも知られています。

 生後6~7か月に生えてくる下の前歯はむし歯になりにくい歯種であり、離乳食だけのうちはむし歯菌も住み着きにくいので、まだ具体的な予防処置の必要は少ないと考えられます。フッ素の歯面塗布は、乳歯の前歯が上下4本ずつ生え揃い、奥歯も生え始めて、さらに糖分の多い飲食物を取り始めて、むし歯のリスクが出てくる1歳過ぎごろから始めて、その後は歯の生え方に応じて3~4か月に1回くらい塗布していくことが推奨されています。ご質問のお子さんは、1歳7か月で奥歯も生えてきたということですので、そろそろ塗布を考えられてもいい時期だと思われます。

 ただ、1~2歳の幼児では、歯科医院で自分から口を開けて、おとなしく塗布を受けることが難しいかもしれません。とくに初めての歯科受診では、見知らない場所(歯科医院)や見知らない人たち(歯科医師やスタッフ)を怖がって泣いたり、嫌がって口を開けない子どもも少なくありません。無理やり押さえて塗布を行うのは、子どもの歯科へのイメージを悪くして、その後の歯科受診を困難にする可能性もあります。歯科受診時の子どもの様子を見て、すぐに塗布を行うか、場所や人に慣れるのを少し待ってから行うかを決めてもいいでしょう。歯面塗布は、通常は小綿球を用いて行いますが、低年齢児にはジェル状のフッ素を歯ブラシに付けて塗布する方法も勧められています。家庭において歯ブラシで歯磨きする習慣がついていると、比較的スムーズに塗布が行えると思います。

 また、むし歯のない子どもへの予防のためのフッ素の歯面塗布は、保険の対象になりません。原則、自費診療になりますので、料金等も確認しておいた方がいいでしょう。

 フッ素の身体への影響をご心配のようですが、フッ素は魚介類や海藻、緑茶などいろいろな食べ物にも含まれている元素です。大量に摂取したり、日常的に過剰摂取すると身体への悪影響を生じる可能性がありますが、通常の使用では問題ありません。1回の歯面塗布に用いるフッ化物の量は幼児では1g程度で、塗布用のフッ化物には9,000ppmのフッ素が含まれているため、1g中に9mgのフッ素を含むことになります。体重1kg当たり5mg以上(1歳半で12kgくらいの体重の子どもでは60mg以上)摂取すると、低カルシウム血症による全身症状が出る可能性がありますが、1回の塗布量ではその心配はないと思われます。

 かかりつけの歯科は、できれば通院しやすい歯科医院が望ましいと思われますが、3歳を過ぎれば子どもの理解力が高まり、協力性も向上して、診療もやりやすくなりますが、1~2歳児では対応に苦慮するという歯科医師も少なくありません。どこの歯科医院でも診てもらえるというわけではないでしょう。

 しかし、健診や予防処置のための歯科受診は、治療の緊急性がなく、診療に痛みなども伴わないので、子どもが歯科に慣れるためのいいチャンスです。ご両親のかかりつけの歯科医院で、子どもの診療も行っているようでしたら、一度相談してみるといいでしょう。子どもはあまり診ていない先生でも、知り合いの小児歯科を紹介してくれるかもしれません。または、ママ友から歯医者さん情報をリサーチしてみてもいいでしょう。地域で小さな子どもを診てくれる歯科医院の情報は、実際にかかっている保護者の方々がお持ちだと思います。

 小児歯科の専門医はまだそれほど多くはありませんが、「小児歯科」を標榜している歯科医院はかなり多くみられます。健診や予防処置のために定期的に受診するかかりつけ歯科は、通いやすいところが望ましいと思われますので、まずはご自分の地域で子どもを多く診ている歯科医院を探してみることをお勧めします。