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歯とお口のケア

Q. 5か月の子。前歯の表面がデコボコしています。 (2022.2)

  • (妊娠週数・月齢)5か月

現在5か月になる息子の歯についての質問です。下の前歯が2本生えてきているのですが、そのうちの1本の歯の表面がデコボコしています。妊娠中の食事の影響なのでしょうか? 乳歯が形成不全の場合、永久歯も同じようになる可能性が高いのでしょうか? いまからでも何か気をつけることがあれば教えていただきたいです。

回答者: 井上美津子先生

 生えたばかりの乳前歯の表面のデコボコは、ご質問にも書かれているように歯の表層の部分(エナメル質)の形成不全と考えられます。エナメル質の形成不全は、乳歯でも永久歯でも比較的発現しやすい歯の異常です。

 遺伝的な要因がかかわるエナメル質形成不全症は、乳歯、永久歯ともにすべての歯に形成不全が見られますが、これはかなりまれな疾患です。一方、顎の骨の中で歯が形成される時期に何らかの問題が起こると、エナメル質の形成不全が生じることがあり、これには全身的な原因(栄養障害や全身的な疾患、薬剤の影響など)がかかわることもあれば、局所的な原因(外傷や顎顔面の炎症・感染など)がかかわることもあります。また、はっきりした原因がわからない場合も少なくありません。

 下の前歯(乳切歯)のエナメル質が形成されるのは主に妊娠期ですので、母体の栄養状態や全身疾患(それによる薬剤の長期服用)などとの関連が考えられますが、思い当たる原因がないことも多いようです。また、出生直後の栄養状態や全身状態が不良になりやすい早産・低出生体重児では、乳切歯を含めたエナメル質形成不全が見られやすいとの報告もあります。ただし、このような全身的原因の場合は、同じ時期に形成された歯質に帯状に形成不全が生じやすく、左右対称に見られることが多いようです。

 エナメル質形成不全の歯は、歯の表層がデコボコしていて食べかすや歯垢(プラーク)が残りやすいため、むし歯になるリスクが高く、また一旦むし歯になると進行が速くなりがちです。離乳食の時期はまだ大丈夫ですが、1歳を過ぎて菓子類やジュースなどの糖分の多い飲食物を取り始めると、むし歯のリスクが出てくるため、口腔ケアや食生活に注意が必要です。早めにかかりつけの歯科を見つけて、定期的に歯の状態をチェックしてもらったり、歯の生え方に応じた歯みがきの指導や食生活へのアドバイスなどを受けるとよいでしょう。フッ化物の利用も効果的なので、歯科医院で歯面塗布をしてもらったり、家庭での仕上げみがき時にフッ素入りの歯みがき剤を使用することもお勧めです。

 また、遺伝的な要因による場合を除いて、乳歯の形成不全の原因がそのまま永久歯の形成不全につながることは少ないと思われますが、原因が不明な場合には永久歯への影響も不明なところがあります。定期的な歯科健診で口の中をチェックしてもらい、永久歯の生え換わりも含めて相談していくといいでしょう。