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病気・予防接種

Q. アデノイド肥大と診断された9か月の娘。 (2022.3)

  • (妊娠週数・月齢)9か月

9か月の娘がアデノイド肥大と診断されました。低月齢のころからときどき鼻がブヒブヒと鳴っていましたが、あまり気になっていませんでした。1か月前に1週間くらいそれが続いたので、耳鼻科で検査をしたところ、両鼻8~9割肥大していて、隙間で呼吸をしている状態と言われました。またネバネバの鼻水も溜まっているということで、シロップの薬と点鼻薬を処方されました。しかし改善が見られず、紹介状を書いてもらって市立病院を受診することに。かぜ症状はまったくなく、何故鼻水が溜まっているのかわかりません。鼻のブヒブヒがひどいのは眠りが浅いときと、指しゃぶり等で口が塞がっているときです。おっぱいは普通に飲みますし、日中、機嫌もいいです。ただ夜は、夜間断乳をしているせいか何回も起きてしまいます。呼吸が止まるなどは起きていません。アデノイド肥大がひどくなるのは普通は2歳以降とのことですが、この月齢で9割近く肥大するのはよくあることでしょうか? 3歳以降でないと手術が出来ないという記事をネットで見たのですが、いまの状況でも手術しない方がよいのでしょうか?

回答者: 横田俊一郎先生

 のどの奥には扁桃組織があって、外から入ってくる病原体や抗原の侵入を防いでいます。これら扁桃組織には口を開いたときに両側に見える口蓋扁桃、舌の奥にある舌扁桃、耳管の入り口周辺にある耳管扁桃、鼻の奥の突き当たりとのどの奥との間にある咽頭扁桃(これをアデノイドと呼びます)などがあり、喉を取り囲むようにリング状に並んでいます。アデノイドは口蓋の裏側にあるので、口を大きく開けても見えないのが普通ですが、非常に大きいと下端が少し見えることもあります。

 扁桃組織は生まれたときには未発達で、2歳ごろから発達が始まり7歳前後でピークに達し、その後次第に小さくなっていきます。アデノイドも2歳ごろから発達を始め、6歳ごろに最も大きくなると言われています。この一般的な発達の過程を考えると、9か月の子どもにアデノイドの肥大があるというのは普通ではありません。アデノウイルス感染症のように扁桃が腫れる病気があると、一時的に扁桃肥大の症状が出ることはありますが、病気が改善すると症状も治るはずです。アデノイド肥大はレントゲンや、鼻腔ファイバーを使わないと判断できませんが、乳児なので検査も大変だと思います。大きな病院でもう一度詳しい検査を受けるようにしてください。

 アデノイド肥大があると、空気が通る鼻腔の間隙が狭くなり、とくに睡眠中は舌根が落ち込むこともあり、それがひどくなります。子どもは口呼吸が上手にできないので、鼻が詰まると首を絞められて寝ているような状態となり、悪化すると睡眠時無呼吸を起こし、血中の酸素飽和度も落ちるようになります。こうなると身体にさまざまな問題が生じることもあり、治療が必要になります。一般的には小学校入学前を目処にアデノイド摘出手術を考えますが、私の経験でも症状が強く2歳台で手術を受けた患者さんもいます。ただ、乳児ではまず手術は行わないと思います。扁桃には免疫を守るという働きもあるからです。

 現在の状態は副鼻腔炎も合併して鼻汁が多い状態になっている可能性もあるかもしれません。その場合には副鼻腔炎の治療をきちんと行ってみることも必要です。また、冬の乾燥した時期には鼻詰まりがよく起こります。鼻垢が固まって鼻腔にへばりついていることも一つの原因です。診察してみると鼻の奥に鼻垢が詰まっていることもよくあります。このような赤ちゃんでは、入浴後の鼻がずるずるしたときに鼻水を吸引してあげること、夜中に乾燥しないよう加湿器を使ったり、寝室に洗濯物を干したりすることを勧めています。

 ご相談のお子さんはかなり苦しそうですが、哺乳もきちんとできているようなので、まだ差し迫った状態ではないように見えます。耳鼻科の先生とよく相談して経過を見守ってほしいと思います。