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病気・予防接種

Q. 1歳半と5歳の子の母。新型コロナワクチンについて教えてください。 (2022.4)

  • (妊娠週数・月齢)5歳

保育園に通う、1歳半と5歳の子がいます。二人とも基礎疾患はありません。住んでいる地域でも、5歳以上の子に新型コロナワクチンの接種が始まりました。上の子にワクチンを打った方がよいとは思うのですが、子どもは感染しても重症化しにくいという話を聞きますし、ワクチンの副反応でつらい思いをさせてしまうと考えると、接種をちょっと躊躇してしまいます。子どもにワクチンを打ったらどれくらい感染予防に効果があるのかや、子どものワクチンの副反応などについて教えてください。また、現在は5歳以上の子どもがコロナワクチンを打てるとのことですが、1歳半の子には新型コロナウイルス予防にどのようなことができますか。いずれ5歳より下の子にもワクチンが打てるようになったりするのでしょうか。

回答者: 横田俊一郎先生

 新型コロナウイルス感染症の流行が長引く中、5歳から11歳の子どものコロナワクチン接種が始まりました。接種させるべきかどうか悩んでいる保護者がたくさんいますし、医師の間でもさまざまな意見があります。

 5~11歳に使われるワクチンはいまのところファイザー社製の1つだけで、従来のワクチンの1/3量となっています。この問題を考えるときに、まず予防接種の効果と副反応、そしてこの年齢の子どもたちが感染したときの症状の重さを比べてみなければなりません。

 効果については、オミクロン株出現前には2回目接種後7日以降の発症予防効果が90.7%と報告されていますが、オミクロン株出現後の米国での研究では12~15歳の2回目接種後14~149日で59%と少し下がっていて、5~11歳では更に低くなっています。最近ではオミクロン変異株BA.2が主流を占めるようになっていますが、これに対する効果の大きさはまだはっきりわかっていません。ただし、発症予防効果だけではなく、入院予防効果も成人同様期待されています。

 副反応については12歳以上とほぼ同等で、50%以上に接種部位の痛みや疲労、10~50%に頭痛・接種部位の腫れ・筋肉痛が見られ、発熱は1~10%とされています。ただし、いずれも軽度~中等度で回復しています。12~18歳の男性において心筋炎が多いことがわかっていて心配されていますが、5~11歳では少なめというデータが示されています。

 次は子どもの新型コロナウイルス感染による重症度についてです。日本においては小児の死亡は極めてまれで、10歳未満では現在まで数人です。オミクロン株の流行で子どもの感染者は明らかに増加していて、従来に比べてけいれん、喉の痛み、悪心・嘔吐などの症状が多くなっています。呼吸器の症状などで入院する中等症・重症の数は増えていますが、肺炎や心筋炎が合併する割合は増えておらず、成人と比較すると低率です。海外では子どものコロナ感染の1~2か月後に起こる小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が問題となっていて、日本ではいまのところ多くありませんが入院例の中にはあるようです。今後、子どもの感染がさらに増えたときには注意が必要となります。

 また、子どもがコロナ感染から守られることにより家族の生活が守られる、保育園・幼稚園、学校の正常な活動が維持できる、という点も考えてみなくてはなりません。さらに、感染対策が子どもたちにさまざまな悪い影響を及ぼしていることも忘れることはできません。

 これらのことを踏まえたうえで、保護者が接種を受けさせるか否かを決めてほしいと思います。5~11歳の接種に「接種勧奨」や「努力義務」が適用されていないのは、オミクロン株については小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスが必ずしも十分でないからとされています。日本小児科学会も「5~11歳の新型コロナワクチン接種に対する考え方」を学会ホームページに掲載しています。この中で、重症化リスクのある基礎疾患を持った子どもには接種を勧めています。健康な子どもへの接種も意義があると考えていますが、保護者がメリット・デメリットをよく理解したうえで接種してほしいと書かれています。かかりつけ医とも相談して決めるのがよいと思います。厚生労働省のホームページもぜひ見ていただきたいです。

 5歳未満の子どもへのワクチン接種は海外でもまだ行われておらず、接種開始の予定もありません。5歳未満の子どもをコロナ感染から守るには、周囲の人たち、特に家族がワクチンを受けて感染を防ぐことがもっとも大切です。

5~11歳の子どもへの接種(小児接種)についてのお知らせ(厚生労働省)
5~11歳の新型コロナワクチン接種に対する考え方(日本小児科学会)