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歯とお口のケア

Q. ときどき歯みがきをせず寝てしまう4歳児。むし歯のリスクは? (2022.9)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

4歳の息子のむし歯予防についての質問です。むし歯は親からうつると聞き、食器や歯ブラシなどの共有は避けてきました。現在、保育園およびかかりつけでの歯科健診ではむし歯は見つかっていません。
息子は、月に1回程度、夜、疲れ果てて歯みがきをせずに寝てしまうことがあり、夫は無理に起こしてでも歯みがきさせたほうがいいと言います。寝起きが不機嫌になり、その後寝なくなるので、口の中にむし歯菌がいないのなら多少目をつぶってもいいのでは?と思ってしまうのですが、やはり1日でもみがかない日があるのは好ましくないでしょうか。また、むし歯菌がいなくても、口腔内で起こる病気やトラブルがあれば教えてください。

回答者: 井上美津子先生

 ご両親ともにむし歯予防には気をつけていらっしゃるようですので、お子さんのむし歯リスクも抑えられていると考えられ、たまに歯みがきをしないことがすぐむし歯につながるとは思われません。ただ、4歳ですと歯みがきもだんだん自分でみがく習慣をつけていく時期です。どうすれば眠くなる前にみがけるのかを子どもと話し合いながら、歯みがき習慣を見直す機会にしてもいいかと思います。

 ミュータンス菌などのむし歯の原因菌が、主に親から子どもの口の中に伝播しやすいことや、菌の伝播を防ぐためには、親や周囲の大人たちの口の中を清潔に(むし歯菌を少なく)して、食具や歯ブラシなどからの菌の伝播を減らす必要があることなどの情報は、かなり広く普及してきました。
 スプーンや歯ブラシの共有を避け、かかりつけ歯科で健診を受けているということからも、ご両親ともにお子さんのむし歯予防に関してかなり気をつけていらっしゃるようすがうかがえます。また、保育園児ということからも、食生活の規律性も問題が少ないことと思われます。たぶんお子さんのむし歯リスクは低く抑えられていることが推察されます。ただし「いま、むし歯がない≠むし歯菌が口の中にいない」ということを念頭に置く必要があるかと思われます。

 ご質問のお子さんの状況では、月に1回程度、歯みがきをしないで寝てしまうことで、すぐにむし歯ができる心配は少ないでしょう。むし歯予防という点だけでみるとセーフなのですが、幼児期の歯みがきには「歯みがき習慣の形成」という大切な要素があります。とくに4~5歳になったら、親に言われてみがくのではなく、自分からみがこうとする習慣をつけて、みがき方を覚えていくことが望まれます。幼児期後半から小学生にかけては、歯みがきで口の中をきれいにすることがおいしく食べたり、口の中の健康を守るために大切であることを子どもにわかりやすく説明して、自分でみがこうとする意欲を育てていくことが重要です。もちろん保護者による仕上げみがきもまだまだ必要ですので、子どもがみがきにくい部位を中心にみがいてあげるとよいでしょう。

 疲れて眠くなり歯みがきができないことが、ごくたまにならあまり問題はないのですが、年長児で運動が活発になると、寝る前に疲れて眠くなることも増えることが予測されます。夕食後にしっかり歯みがき(仕上げみがきも含めて)をして、その後は水や麦茶だけにして、寝る前はブクブクうがいで済ませるという方法もあると思います。子どもと相談して、歯みがきの時間帯を見直すことも一案でしょう。子どもも自分で選択したルールでしたら、がんばろうという気持ちが出てくるのではないかと思われます。
 また、3歳を過ぎて乳歯が生え揃った後のむし歯は、奥歯の歯と歯の間(隣接面)に発生しやすくなります。隣接面のむし歯は、初期段階では目で見ただけでは発見しにくく、むし歯が進行して穴があき始めて、初めて見つかることも多いものです。隣接面は歯ブラシだけでは清掃しにくい部位なので、むし歯予防にはデンタルフロスを用いての清掃が必要になります。また、糖分の多い間食や甘味飲料が増えると、むし歯のリスクは高まります。食生活面では、家庭での間食や飲料の与え方に気をつけましょう。

 むし歯菌がいなくても、口腔内で起こる病気やトラブルはさまざまですが、歯に関しては「酸蝕症」にも気をつける必要があります。酸蝕症は、食べ物や飲み物などに含まれる酸が直接歯の表面に作用して起こる歯の脱灰です。レモンやオレンジなどの酸性の果物などを頻繁に食べたり、ジュース・炭酸飲料・スポーツ飲料などの酸性の飲料を水代わりに飲んだりしていると、歯が溶けやすくなります。また、むし歯菌が少ない歯の汚れ(プラーク)でも、歯と歯ぐきの境目に付着したままですと、歯肉炎ができやすくなります。むし歯予防だけではなく、よりよい食習慣と歯みがき習慣を幼児期に身につけていくことが、歯や口の健康を守るために大切です。