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歯とお口のケア

Q. フッ素塗布による斑状歯が心配です。 (2022.11)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

息子は、1歳半から3歳になるまで、3か月おきに歯科医院での定期検診と、9000ppmのフッ素塗布をしてもらっていました。そちらの歯科医院では、最初の塗布後、1週間してからもう一度塗布するという2回1セットのやり方でした。一般的には、一回の塗布を3か月ごとにだと思うのですが、1週間しかあけずに再度塗布するやり方だと斑状歯にはなりませんか? 永久歯に生え替わってから、どんな影響があるのかも不安です。

回答者: 井上美津子先生

 斑状歯(歯のフッ素症)は、長期間にわたり過剰なフッ化物を摂取した場合に起こる歯の形成障害やエナメル質の異常のことで、おもに飲料水のフッ化物濃度が高い地域で発生しやすいものです。歯面塗布では高濃度のフッ化物を用いますが、年に何回かの塗布では、このような斑状歯のリスクは生じません。

 フッ化物によるむし歯予防は、広く応用されています。応用法としては、全身応用(水道水への添加、食品への添加、錠剤の服用など)と局所応用(歯面塗布、洗口、添加歯磨剤の使用など)がありますが、日本ではほとんどが局所応用です。

 歯面塗布の場合、用いられる薬剤としては2%フッ化ナトリウム溶液、酸性フッ素リン酸溶液、酸性フッ素リン酸ゲルなどがあり、多くの製品で9,000ppmのフッ素が用いられており、通常は年に2~4回塗布されます。フッ化物洗口では、週1回法で0.2%フッ化ナトリウム溶液(フッ素濃度900ppm)、毎日行う場合は0.05%フッ化ナトリウム溶液(フッ素濃度225ppm)が用いられます。また、日本で市販されているフッ化物配合歯磨剤は、今までは1,000ppm以下のフッ化物配合のものが多かったのですが、最近では1,500ppmまでが認可されています。しかし、幼児には歯磨剤を飲み込んでしまう可能性も考えて、500ppm以下のものが推奨されています。

 フッ化物の応用によるリスクとしては、誤って大量のフッ化物を一時的に摂取した場合の急性中毒と、一定濃度以上のフッ化物を長期間にわたって摂取した場合の慢性中毒が考えられます。

 急性中毒は、体重1kg当たり2mgを超えるフッ化物を摂取すると吐き気、腹痛、下痢などの症状が現われやすく、5mg/kg以上だと医療対応が必要になるとされています。1~3歳児の体重は12~15kgくらいですので、2mg/kgは24~30mgであり、歯面塗布時のフッ素濃度9,000ppmの薬剤1mL中には9mgのフッ素が含まれていますが、1回の塗布に使われる薬剤量は2mL以下(幼児では1mL)ですので、全量を飲み込んでしまっても急性中毒の危険性はありません。また、通常の塗布で口腔内に残留する薬剤量は15~20%程度と考えられており、十分に安全な量です。

 慢性中毒は、長期間にわたり一定濃度以上のフッ化物を摂取した場合に、歯や骨などに生じる症状であり、歯のフッ素症(斑状歯)は歯の形成期(永久歯で8歳頃まで)に過剰量のフッ化物を継続的に摂取した場合に起こり、歯の形成障害(とくにエナメル質の形成不全)を主症状とします。審美的に問題となる中程度以上の歯のフッ素症が発現するのは、飲料水中のフッ素濃度が2ppm以上の場合と報告されています。骨のフッ素症は、さらに濃度の高い飲料水を10年以上摂取した場合に起こり、その症状も濃度によりさまざまとされています。飲料水以外でも、洗口液を毎回全量飲んでしまったり、歯磨剤をそのまま食べてしまうことが続いた場合は、歯のフッ素症が生じる危険も考えられますが、通常の使用ではほとんど問題はないと思われます(洗口はブクブクうがいが可能になり指示に従える4歳以上に行うことや、歯磨剤も幼児には保護者の管理下で少量使わせることが推奨されています)。

 1歳半からの定期健診とフッ化物の歯面塗布は、お子さんのお口の健康維持に有効だと思われます。そして、定期健診の際に2回で1セットの歯面塗布を受けたことで、斑状歯をはじめとした歯への悪影響のご心配はないと考えられます。

 歯面塗布の場合には薬剤によって塗布のやり方が少し異なり、リン酸を加えて酸性化したフッ化物溶液・ゲルですと、酸性にして反応性を高めることで1回の塗布ですみますが、フッ化ナトリウム溶液では中性でやや取り込みが少ないため、2週間に複数回の塗布が勧められています。酸味を嫌う幼児には、中性のフッ化ナトリウム溶液を使っていることも考えられ、とくに問題となるやり方ではありません。