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性格・親のかかわり・育て方

Q. 私の叱り方が悪いからか、長男が弟たちを叩いたりします。 (2022.12)

  • (妊娠週数・月齢)5歳

うちには5歳、3歳、9か月になる3人の息子がいます。5歳の長男はいろいろなことが分かってきて、できることも増えています。それに比例して、私が叱ることも増えてきました。怒鳴るのは日常茶飯事です。正直、手をあげたこともあります。最近、長男が自分の思い通りにいかなかったり兄弟喧嘩をしたりするときに、相手を叩いたり怒鳴ったりします。確実に私の叱り方が悪かった、悪い影響を与えてしまったと反省しています。今後、長男にはどのように接していけばよいでしょうか?

回答者: 高橋惠子先生

 3人の男の子を育てるのは大変なことでしょう。「怒鳴ったり、手をあげたり」してしまうのはわかります。しかし、質問者がすでに気づかれているように、この悪習はやめなくてはなりません。しつけのためだといって体罰を肯定する人が、日本は欧米に比べて数倍も多いことが調査で繰り返し指摘されています。

 子どもに「怒鳴ったり、手をあげたり」してはいけない理由は、少なくとも3つあります。

 第一に、「怒鳴ったり、手をあげたり」することは、子どもの人権を侵害するからです。これは人間としてやってはいけないことです。子どもでも、たとえわが子でも、ひとりの人間として尊重しなければなりません。
 第二に、悪いことをやめさせたいと「怒鳴ったり、手をあげたり」しても、しつけとしての効果がないからです。しつけとは、「子どもに社会の価値や規則を伝えること」だと言えましょう。子どもに、やってほしいこと、やってほしくないことを伝えることです。そのためには、なぜそうしてほしいのかについて、子どもが理解できるようによく説明しなければなりません。それが、伝えるためには必要だからです。
 母親の大声や暴力は子どもの行動を一時的に止めるので、効果があるように見えます。しかし、子どもは理解して止めたのではなく、母親が怖いからやめただけです。やってはいけないわけを理解してはいませんので、母親が見ていないときには、同じことをやり続けることになります。さらに問題であるのは、そのような怖い母親を子どもは嫌いになることです。自分は愛されてはいないと感じ、母親の言うことを聞かなくなります。
 どんなに幼い子どもにも、言葉で、なぜそれをしてはいけないのかをていねいに説明しましょう。5歳なら言葉での説明を理解できます。もっと幼い子どもにも、言葉で伝えましょう。幼くて内容はよくわからなくても、親の真剣な話かけで、“大事なことらしいな”と理解します。これが初めの一歩です。
 第三に、子どもは暴力をふるうシーンを見ると、暴力のふるい方を簡単に学習してしまうことが、心理学の実験で明らかにされています。質問者が書いておいでのように、ご長男は、日ごろの母親の行動を見て暴力のふるい方を学習してしまったのです。つまり、「怒鳴ったり、手をあげたり」の行動が学習され、おそらく、肝心のしつけの内容は伝わってはいないと思われます。

 そこで、今後お子さんにどのように接したらよいかを考えてみましょう。

 第一には、前記の理由をしっかり頭に入れてください。そして、大声や体罰はやめると固く決心して、子どもに接しましょう。子どもが事を起こしたら、大きく呼吸をして自分を落ちつかせましょう。母親が大声をあげないようにすると、次第に子どもも大声をあげなくなります。母親が体罰をやめて、静かな声で話しかけると、子どもはそれを聞こうとするはずです。家の中から、大声や暴力をすべて追放するつもりで、実践してみてください。
 第二には、子どもを信じることです。いろいろなことができるようになったご長男を信じ、できることをたくさん褒めましょう。そして、危険のないかぎり、子どものことは子どもに任せましょう。きょうだいは助け合ったりもめたりしながら、子ども同士がどのように付き合うかを学習しているのです。もしも、子どもたちのエネルギーが余っているように感じたときには、公園などの広い場所に連れ出して、気持ちを解放するのも有効でしょう。
 第三には、お母さん自身の気持ちの解放が必要です。人生100年時代をどのように生きていくかを考えてみましょう。子育てで忙しいのは、ほんの数年ですので、焦る必要はありません。しかし、子育ては母親だけが背負うものではありません。夫にも子どもにも、それを伝えることが、彼らのためにも大切です。時には子どもを預けて、自分のためだけの時間を楽しんでください。