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性格・親のかかわり・育て方

Q. かわいがっている3歳の娘を突然、突き放す妻。娘の心への影響が心配です。 (2022.12)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

妻の子育てについて相談させてください。娘はまだ3歳、わがままも多い年ごろです。妻は娘がかわいいと溺愛に近い愛情を注ぎますが、かわいがっていたかと思うと、次の瞬間には「もう一緒に寝ない」とか「意地悪しないで!」と突き放したりします。娘がご飯を食べるのをいやがってぐずったり、ものを放り投げたり、お風呂や歯みがきをいやがったりと、妻のそうした言動の原因となる行動も確かにあるので、手こずる妻が強めの態度に出ているのはわかるのですが、その変貌ぶりには娘も戸惑っているように見えます。最近は、妻の顔色をうかがい「お母さん好き」と言ったりしているように見受けられます。娘は、妻に突き放されると私に泣きついてくるので、冷静に話を聞くようにしています。また、妻が娘を突き放す前に、歯をみがくように促したりするものの、娘は私のことは軽く見ているのか、たいてい言うことを聞きません。妻が娘に「お父さんは汚い」とか「意地悪」とか、長いこと言い聞かせていた影響もあると思います。妻のこの「意地悪しないで」と言う心境がいまだに理解できません。娘が生まれる前からよく言っていましたが、3歳の娘に向かって「意地悪」というのは、どういう心境なのでしょうか。そして、かわいいかわいいと溺愛した数秒後に娘を突き放す心境とは、どういうものなのでしょうか。情緒不安定なのでしょうか。娘の心への影響が心配です。

回答者: 帆足暁子先生

 そうですね。あなたがお子さんの心への影響を心配されるお気持ちが伝わってきます。
 まずは、あなたの妻を理解することから考えていきたいと思います。

 ご相談の内容の中で気になった言葉は、あなた同様に「意地悪しないで」という言葉です。その言葉が、あなたの妻の状況を象徴しているように思えます。お子さんが生まれる前からあったということですから、たぶん、子どものころから、親の言うことを聞かないと「意地悪」と言われてきたか、「意地悪」をされてきたのではないかと推察します。「溺愛」もしかり。つまり、あなたの妻は心からかわいがられたことがなく、子どものころから傷つけられていて、心の傷が、子育ての中で再現されてしまっているのではないでしょうか。

 ですから、あなたの妻はお子さんをかわいいと思っても、どうかわいがったらよいのかわからないように思うのです。かわいがりたいと思っているのにかわいがられた記憶がないので心からかわいがることができず、代わりに抱えてきた記憶にある怒りに直結してしまい、自分で自分の感情をコントロールできずに、お子さんに当たってしまう。ご自身が一番苦しまれているように思います。
 なぜなら、子どものころの心の傷は、癒されないまま知らず知らず大人に成長していく間に心にふたをすることができるようになり、何とか折り合いをつけられたと自信を持ってしまうのです。でも、それが子どものころと似たシチュエーションである、子育て場面に直面するとフラッシュバックのように、その傷が再現されてしまうのです。
 「意地悪しないで」という妻の言葉には、大人の姿はしていますが、今も苦しんで助けを求めている子どもの姿が重なって見えるようです。誰かが助けなくてはなりません。でも、母親という立場になると、助けてくれる誰かを家族の中で見つけるのは難しくなります。今回のように、母親より子どもの方が弱い立場だからです。大人は子どもを最優先で守らなければならないのです。
 ですから、できれば妻が信頼している、かかりつけ医やカウンセリング、子ども家庭支援センター等の専門機関を使って、一緒に心の傷を整理していくことが必要だと思います。

 そして、お子さんを守ること。
 あなたの妻と同じような大人をつくらないために、あなたにできることはたくさんあります。まずは、あなたがされているように、母親の怒りにつながるような行動になる前にお子さんの行動に介入することです。お子さんがあなたの言うことを聞かないことがあっても、淡々と「なぜそうしないとならないか」を端的に筋を通して説明してください。理解力のある子どもであれば、繰り返していく間にその意義を理解できて自分から行動を変えることができるようになります。

 それから、あなたの妻がお子さんにあなたのことをいろいろ話していたとしても、あなたはそれに動じる必要はありません。あなたの妻の行動は、子どものころに見た大人をモデルに再現しているだけかもしれないからです。

 何より、こうしてお子さんのこと、そして理解できない妻を理解しようとされるあなたは、とてもステキな父親であり夫です。自信を持ってお子さんに向き合ってください。

 そして、苦しんでいる妻と一緒に、その苦しみから離され、幸せな人生をこれから一緒に築いていくプランを考えていってください。そのお二人の姿はお子さんが心から安心でき、癒されることにつながっています。