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発育・発達

Q. 生後3か月を過ぎても、原始歩行反射がなくなりません。 (2023.3)

  • (妊娠週数・月齢)3か月

生後3か月半の男の子です。原始歩行反射がなくならず、お風呂の中や抱っこして立たせたときなど、必ずヨイショヨイショと得意げに歩いて向かってきます。かわいいのですが、原始反射が消失していないのも、何か大脳中枢に問題があるんじゃないかと心配になり、質問しました。生後3か月以降も歩行反射がなくならない子どもは、よくいるのでしょうか?

回答者: 横田俊一郎先生

 生まれたばかりの赤ちゃんはまだ神経が発達しておらず、さまざまな刺激に対して無意識に手足を動かすだけです。この「刺激に対して無意識に反応する動作」を原始反射と呼んでいます。

 ヒトの神経は、脊髄→橋→中脳→大脳皮質という順番で発達していき、その発達段階に応じて異なった反射が出るようになります。たとえば、赤ちゃんを抱きかかえて上体を床に落とすようにすると、両腕を伸ばし両手を開いて着地しようとします。この反射はパラシュート反射と呼ばれ、中脳レベルまで神経が発達する8~9か月頃から見られるようになり、一生続きます。

 新生児期から2~3か月までの赤ちゃんは、脊髄~橋レベルまでしか神経が発達していません。橋は脳幹の一部で、延髄と中脳に挟まれた部分です。何らかの刺激があると神経を通って反射中枢へ届けられ、そこから指令が出され別の神経を通って身体を動かすことになります。この反射中枢が脊髄~橋レベルにある反射がこの時期に見られるわけです。

 この時期の原始反射の大切な点は、正常なすべての赤ちゃんに見られ、脊髄レベルの原始反射は生後2か月くらい、脊髄〜橋レベルの原始反射は5~6か月に消えることです。原始反射の例を挙げてみると、手のひらや足の裏を圧迫すると指がものを掴むように曲がる「把握反射」、指または乳首が顔に触れると口をとがらせそれを捉える「探究反射」、口腔内に捉えた指や乳首を吸う「吸引反射」、頭を少し持ち上げて落下させると腕を伸ばして手を開き何かを掴むように手を動かす「モロー反射」などがあります。

 今回のご相談である「歩行反射」は脊髄レベルの原始反射で、足底を床に着けると立とうとする反応(陽性支持反応)に続いて、赤ちゃんを前傾させると自動的に歩き出す反射です。脊髄レベルの原始反射なので、生後2か月くらいになくなるのが一般的です。

 原始反射は必ず出るものなので、原始反射がない場合は重大な神経の病気がある可能性があると言えます。ただ、原始反射が出ないことだけが症状ということは少ないので、頭蓋内出血などの病気がすでにあることが多いです。また、原始反射の中には反射を出しにくいものもあるので、不安な場合には発達のことを専門としている小児科医に相談するのがよいでしょう。

 逆に原始反射が消えないというときにも、同じようなことが言えます。原始反射が消えないことだけが大きな病気の症状ということはほとんどなく、重大な病気のある赤ちゃんにいつまでも原始反射が見られる、と考えてよいと思います。ご相談の赤ちゃんも声を出したり笑ったりしていて、首すわりなども始まっているのであれば、生後3か月半でまだ歩行反射が残っていてもまず問題はないと思います。原始反射が消える時期については個人差も大きいので、もう少し経過を見ていてよいと考えますが、心配であれば予防接種のときなどにかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。