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母乳とミルク・授乳

Q. 搾乳して飲ませることにデメリットがあるのでしょうか? (2023.4)

  • (妊娠週数・月齢)1か月

産後、病院では母乳を直接与えていたのですが、乳首が荒れて痛くなったため、家では自動の搾乳機で搾乳してから与えていました。産後2週間の健診で、搾乳して授乳していることを伝えると、看護師さんがあまりよい顔をしませんでした。搾乳がダメで母乳を直接飲ませないといけない理由があるのでしょうか。搾乳した母乳は搾乳後すぐに飲ませるようにして、放置したりなどはしていません。搾乳していたときは、昼もぐっすり寝ていましたが、いま現在、直接飲ませるようにしたら、全然寝てくれなくなりました。

回答者: 市川香織先生

 搾乳した母乳を与える授乳方法から直接母乳を吸わせる授乳方法に変えたところ、赤ちゃんが寝てくれなくなりお困りなのですね。現在は、生後1か月くらいでしょうか。赤ちゃんの食欲も増してくるころですね。

 出産後、直接母乳を与えていたら乳首が荒れて痛みが出てしまったとのこと。これは、多くのお母様方が経験するトラブルで、乳頭に傷ができる、皮がむける、水疱ができるなど、痛みを伴うことが多く、直接授乳するのが難しくなります。出産後すぐの時期は、赤ちゃんもお母様もお互い初めてのことなので、赤ちゃんが乳首をくわえるときに浅飲みになってしまうため起きることが多いのです。

 そこで搾乳という対処方法がありますが、それにはお母様が自分の手で絞る方法と、器械を使って自動で絞る方法があります。搾乳は、乳首の傷が癒えるまで一時的に行う場合と、赤ちゃんが新生児集中治療室(NICU)などに入院してしまい母乳を届けるために行う場合があります。赤ちゃんに直接吸わせることができない場合、搾乳することで、赤ちゃんは人工乳ではなくお母様の母乳を飲むことができるので、母乳のメリットを受け取ることができますね。

 では、なぜ直接母乳の方が搾乳より勧められるのでしょうか。搾乳のメリットとしては、乳頭や乳首に傷ができて赤ちゃんに吸われると激痛がある場合などに、痛みを避けることができます。自動の器械を使えば、赤ちゃんがうまく吸えずに時間がかかる場合に比べ、短時間で乳房を空にすることもできます。一方で、デメリットとしては、授乳時間とは別に搾乳という時間を確保しなければなりません。搾乳の器械や哺乳びんなどは洗浄・消毒の手間もあります。搾乳してすぐに飲ませているということですが、もし保存しておく場合は冷凍用パックに入れ、授乳の際にはそれを解凍することも必要になります。手間も時間もかかってしまうのが一般的です。ただし、これらは慣れてしまえば問題ないという場合もあります。

 もう一つデメリットとして考えられるのは、赤ちゃんは母乳を直接飲む場合、舌を乳首に巻き付けてしごくように動かし、しっかりと圧をかけて母乳を飲み取りますが、一般的な哺乳瓶の乳首ではそこまでの努力をせずに飲めてしまうということです。これで何が起こるかというと、赤ちゃんが哺乳瓶での授乳に慣れてしまい、直接母乳を吸わせようとしてもうまく吸ってくれなくなるということです。「乳頭混乱」といわれる状態で、文字通り、赤ちゃんがどの乳頭をどうやって吸ったらうまく飲めるのかわからなくなってしまうのです。きっと、哺乳瓶で搾乳を飲んでいたときはらくらく吸えていたのに、直接母乳を飲もうとしたら、今までと同じ吸い方では十分満足するまで吸い取れず、満腹で眠るまでには至らないのではないでしょうか。ただ、お母様もこれまで搾乳を続けてきたので、たっぷり母乳が出ているようですし、赤ちゃんも乳頭混乱でまったく吸ってくれないという状態ではないので、慣れてくれば直接たっぷりと飲めるようになります。

 直接飲ませるときのコツとしては、乳輪が隠れるくらい大きなお口でくわえついてもらうようにすることです。お母様も、深くくわえてもらったほうが傷などトラブルになりにくくなります。直接吸ってもらったほうが楽という状態になれば、授乳時間も短縮してくることでしょう。搾乳という切り札を持ちつつ、直接授乳も楽しんでいただけたらと思います。