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病気・予防接種

Q. 生後5か月。BCG予防接種前に母親が新型コロナ感染症になりました。 (2023.12)

  • (妊娠週数・月齢)5か月

生後5か月の赤ちゃんの予防接種について質問です。先日、母親の私が新型コロナウイルスに感染しました。生後5か月の赤ちゃんはとくに新型コロナウイルス感染症の症状がなかったので、私が感染した2週間後にBCGの予防接種を受けました。ただ、乳幼児は症状が出ていなくても新型コロナに感染している場合もあると聞きました。また、生ワクチンの前後に感染症にかかると免疫が干渉して、抗体がつきにくいとも聞いたことがあります。もし無症状でも感染していた場合、BCGワクチンの抗体がしっかりついたかどうかが心配です。

回答者: 横田俊一郎先生

 ご質問のとおり、生ワクチンの接種後に感染症による発熱が重なると、ウイルス感染による干渉や、ウイルス感染時に起こるインターフェロン産生などが影響して、抗体ができにくくなることが知られています。麻しんワクチン接種後7日以内に発熱すると、抗体の陽転率が下がるという報告も見られます。

 麻しんだけではなく、風しんやおたふくかぜ、水ぼうそうなども同じようなことが考えられますが、BCGはこれらのワクチンとは免疫のでき方が少し違います。BCGは結核の予防接種で、結核菌は細胞内に寄生する菌のため、抗体による体液性免疫ではなく、Tリンパ球とマクロファージを主体とした細胞性免疫で菌を排除しようとします。腕に接種されたBCG菌(ウシの結核菌を弱毒化したもの)は、その場所で貪食され、殺菌、消化されます。消化された時に BCG菌の一部は抗原としてマクロファージからTリンパ球に抗原情報が提示され、Tリンパ球はこれを記録して結核菌に対応する抵抗力を獲得することになります。

 つまり、麻しんなどの注射の生ワクチンが血液全体の中で免疫反応が起こっているのに対し、BCGは接種した局所で免疫反応が起こるため、ほかの感染症の影響は受けにくいと考えられます。BCGを接種した部位は、接種後10日くらいから赤くなり始め、接種後1か月から2か月の間は赤みやかさぶた、ジクジクした皮疹が続きます。この反応が正常に出ているのなら、免疫のでき→(出来)方には問題がないと考えてよいと思います。BCG接種のハンコの押し方が弱いと免疫のでき方が悪く、皮膚の反応もあまり出ないことがありますが、皮膚の反応の程度だけからでは免疫獲得の状態を正確に判断することは難しいと考えられています。

 ただ、BCGの効果は長期間続くものではなく、小中学生になると免疫が低下して結核に感染することも珍しくありません。BCG接種の目的は、その後長期間結核菌に感染しないようにするためというより、乳幼児に見られる命に関わるような重症な結核(結核性髄膜炎、粟粒結核)を防ぐことに一番の目的があります。したがって家族に結核の患者さんがいる、などの心配な環境がないのであれば、免疫のでき方を心配する必要はあまりないと思います。

 一方、新型コロナウイルス感染症は1歳未満でかかると重症になることもありますが、症状がほとんどないということも、もちろんあるはずです。どうしても感染したかどうかを知りたいのであれば、血液の抗体検査をするという方法もあります。しかし、感染したことがわかっても新たにすることは何もありませんので、本人に症状がなかったのであれば、抗体を検査することは一般的には行われていません。

 ちなみに、新型コロナウイルス感染症にかかったあとは、どのくらいたてばワクチン接種が可能なのかについては、小児 COVID-19 合同学会ワーキンググループの作成した「小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針」の「Q12」に解説があり、「予防接種(SARS-CoV-2 ワクチン以外)は、症状消失後2~4週間程度(無症候性では診断後2週間程度)、SARS-CoV-2 ワクチンは症状消失後4週間程度の延期が目安となる」と書かれています。この記載から判断しても、ご質問のBCG接種については大きな問題はないと考えてよいと思います。