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性格・親のかかわり・育て方

Q. 5歳の娘。出かける支度などが途中で止まってしまいます。 (2024.5)

  • (妊娠週数・月齢)5歳

5歳の娘です。毎日、支度やトイレ、手洗いの際に止まったり遊び始めたりして行動を中断してしまうことに困っています。幼稚園の支度は最初よりは成長し、自分で進められることも増えてきたのですが、気分によります。娘が支度やトイレをする際に「だるまさんがころんだ」やかくれんぼのように、1から10まで数え、「もういいかい」と聞いたりして促すのも一時期はハマって、順調に進めることができていました。しかしもうそれは嫌になってしまったようです。自分が納得して取り組むことを大事にしているのだと思い、褒めながらやらせてみたときもあります。そのときは娘も喜んでいたのですが、解決しません。急ぐ必要はないから、ゆっくりでいいから、止まったり遊んだりしないで、と散々言っているのですが、なぜなのでしょうか。よい解決策はありますでしょうか。

回答者: 高橋惠子先生

 忙しい朝、母親が「早くしなさい」と子どもに支度をせかすのはよくある光景だと思います。しかし、子どもに聞いた調査では「早くしなさい」と言われるのはとても嫌であり、心外だとすら考えていることが報告されています。子どもに尋ねると、自分は何をするかわかっているし、自分のやり方や順番でやりたいし、ひとりでできるから、かまわないでほしいというのです。子どもに任せていたら毎日遅刻をしてしまう、と母親としては許容できないことでしょうが。

 この問題の打開のために、お母さんには次の3点を考えてほしいと思います。

 第一は、子どもの能力をもっと信じようということです。赤ちゃん時代からケアを続けてきた母親には、子どもはいつまでも幼く見え、能力の発達を認めることが遅れがちになることに注意しましょう。質問者がすでに気づかれているように、お子さんは通園の準備ができるようにすでに成長しつつあります。子どもは自分で行動できるように早くなりたいのですから、その子どもの能力を信じ、子どもに任せる勇気が、母親には必要です。危険がないように環境を整えておけば、あとは子どもにひとりでさせてみましょう。

 第二には、子どもの人権・権利を尊重しようということです。母親はとかく自分のやり方が最も効率がよいとか正しいとかと思いがちです。しかし、実際にはいろいろな順番ややり方があるのも事実でしょう。母親は相手が幼い子どもであると、“調教師”のようになって「決まったやり方で早くすること」を強要しがちです。このような要求を親が続けていくと、子どもは自分で考えなくなり自発的な行動ができにくくなります。母親がこのような“調教師”にならないためには、「子どもの人権・権利を尊重すること」が必要です。母親であっても、子どもを自分の意のままにしてはいけません。たとえば、トイレを10数えるうちに終えなさいなどということは、相手が子どもだからよいと考えてのことでしょう。しかし、あなたが「早くしなさい」とせかしている相手がもしも「おとな」であっても許されることであろうかと考えてみましょう。「おとな」にしてはいけないことは、たとえわが子にでもしてはいけないと、私は考えます。それは、どの人間にとっても大切な人権を侵害することになるからです。

 そして第三には、行動する速さとエネルギーの使い方については個人差があるという事実を認めることです。なんでも手早くさっと片付ける人もいますが、何事についても自分のペースでゆっくり慎重に行う人もいます。そして、両者の中間の人もいます。このようなエネルギーの使い方についての違いは、生まれつきの性質(気質)であると考えられています。質問者がお子さんの行動がゆっくりしているように感じるのは、母子間でこの性質が違っているせいかもしれません。お子さんは父親に似てのんびりタイプだということはありませんか。行動が早いかどうかについては個人差があることも考えてみるとよいでしょう。ゆっくりしているように見えても、本人としては急いでいるということもあるわけです。

 さて、このような3点を考慮して、母親としてはどうすればよいかと問われたら、私の回答は「子どもの身支度は子どもに任せて、母親は子どもの様子を見ないようにする」のがよいというものです。朝は忙しいのですから、子どものことは子どもに任せて、母親は自分の仕事を済ませるのがよいと思います。もしも遅刻をするようであれば、少し早くから身支度を始めるとよいでしょう。