歯とお口のケア
Q. 1歳。寝ているときに口があいているのが気になります。 (2024.8)
- (妊娠週数・月齢)1歳0か月
1歳の娘の母です。娘は寝ているときに、口があいた状態です。普段から指をチュパチュパするのですが、そのまま寝てしまい、気づいたら口から指が離れて口があいています。口があいたままだとよくないと聞いたのですが、どのようなデメリットがありますか。また何歳までに直したほうがよいのでしょうか。放っておいて自然に直るものでしょうか。改善法があれば教えてください。
回答者: 井上美津子先生
口があいたままの状態は、「お口ポカン」と表現されて、最近注目されるようになってきました。昼間もずっと口があいたままの子どももいれば、寝ているときに無意識に口があいてしまう子どももいます。また、口があいたままだと、口で呼吸している子どもも多く見られます。
ご質問のお子さんの場合、まだ1歳であることや、寝ているときだけのようですので、しばらくは指しゃぶりの頻度を減らしていったり、指しゃぶりをしていないときにお口を閉じることを意識づけていくこと、遊びなどで口を閉じる力をつけていくことなどの対応をしていくとよろしいかと思います。
近年、子どものむし歯が減少したことなどにより、子どもの口腔機能への関心が高まっています。なかでも「口をよくあけていて口呼吸が疑われる子ども」は、3~12歳児の3割くらいに見られたという調査結果が公表され、話題になりました。
お口ポカン(口唇閉鎖不全)や口呼吸が長く続くと、さまざまな影響や弊害(デメリット)が出てきます。口があいたままで口呼吸をしていると、口の中が乾燥し、口臭や歯肉炎が生じやすくなります。また口呼吸は、鼻呼吸に比べて空気中の異物や細菌、ウイルスなどの除去が困難なため上気道感染を起こしやすいほか、いびきや睡眠時無呼吸を引き起こすこともあると言われています。口をあけたまま食べることが習慣になると、食べ方の問題(くちゃくちゃ音のする食べ方や口からこぼしやすいなど)も生じやすくなります。これらのデメリットは、口唇閉鎖不全や口呼吸が口腔習癖(口のくせ)として日常生活に定着してくると顕著になりやすいため、幼児期よりは学齢期に問題にされることが多くなります。
乳児期は、唇を閉じる力が弱く、上唇が富士山型にあいていることも多いのですが、このころは口の中が狭く舌が大きいため、口は少しあいていても通常は鼻で呼吸をしています。
幼児期になり、顎や口腔の発育によって唇を上手に閉じられるようになると、普段は鼻呼吸をして、口を閉じて溜まった唾液を飲み込めるようになり、よだれも減ってきます。鼻炎やアデノイドなどで鼻呼吸が困難だったり、唇を閉じる力が育っていない子どもでは、口呼吸や口唇閉鎖不全が見られやすくなります。また、指しゃぶりのある子どもでは、指をしゃぶっているときにはしっかりと口の周囲の筋力が働いていますが、指を外すと筋力が緩んで口があいた状態になりやすいと言われています。指しゃぶりをしていないときの口の状態にも注意が必要です。
ご質問のお子さんの年齢では、指しゃぶりもまだ乳児期の生理的な行為の延長と考えられますし、お口を閉じる力も育っている時期と考えられます。おしゃべりや外遊び、手を使う遊びなどで指しゃぶりの頻度を減らしていくことや、吸ったり吹いたりする遊びなどで唇の力をつけていくことなどの対応をしていくとよいでしょう。2~3歳になって言語理解が進んできたら、「お口を閉じて、鼻で息をする」ことの大切さをわかりやすく説明したり、やさしく声かけをしてあげましょう。歯みがきのときのブクブクうがいなども、口唇の閉鎖力のトレーニングとしてお勧めです。乳歯が生え揃う3~4歳をすぎても指しゃぶりが続くと、歯並びや咬み合わせに影響が出やすくなり、口唇閉鎖不全も見られやすくなります。そろそろ子どもが自分から指しゃぶりをやめようとする気持ちを育てて、周囲がサポートするという対応が望まれます。