赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバーママ・パパの気持ち

ママ・パパの気持ち

Q. 3歳半の娘とうまくいかず、つらく感じます。 (2024.8)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳半になる娘は、赤ちゃんのころから夫のことが大好きで、常にパパのあとをついてまわったり、一緒に遊ぶことをせがみます。わが家は共働きで、娘を出産したときから夫は積極的に育児をしてくれました。夫は娘のことをまったく怒りません。言うことを聞かないとき、悪いことをしたときに叱るのはいつも私です。そのためか、最近は「ママ嫌い」がエスカレートしてきました。娘がかんしゃくを起こして、私が叱ると「もうママなんて大嫌い!」「ママじゃなくてパパがいいの!」と毎日のように言います。たとえば、夫が席をはずした際に娘が飲み物をこぼしてふこうしたときも、私が手伝おうとしたら「ママじゃなくてパパにやってほしいの!」と怒ってきました。
「〇〇ちゃんに嫌いって言われたらママ悲しいな」「ママも〇〇ちゃんのこと嫌いって言ったらどう思う?」と冷静に言い聞かせてきたつもりですが、疲れてしまいました。寝かしつけも私がすると「パパがいいの! 呼んできて」と追い返されてしまい、結局夫と交代します。もう娘に対して、どう接していいのかわかりません。夫は「娘と仲良くしてくれないと困る」と、あえて寝かしつけを私に任せてくれたりするのですが、娘に「ママはいらない!パパがいい」と言われ続けると、まだ幼いからと思っていてもつらく、自分はいらないのだと感じてしまいます。どうしたらいいのでしょうか。

回答者: 高橋惠子先生

 幼児は「お母さん子」であると一般に考えられていますので、「ママ嫌い」と言われる母親が動揺するのは当然です。しかし「ママ嫌い」と言う幼児は決して珍しくありません。私たちが3歳半から小学2年生まで、同じ子どもたちに毎年繰り返し行った調査でも、「ママ嫌い」と一貫して言う子どもが数名いました。この子どもたちは、そのときの気分で答えているのではなく、足掛け6年の調査で毎回そう言い続けました。子どもと母親にさまざまな調査をしてみたところ、次の2点が明らかになりました。
(1)幼児でも心の安定にとって大切な人を、自分で選んでいる
 幼児は日々の生活でいろいろな人と接しています。たとえば、父母、祖父母、いとこ、保育園の友だち、先生、バスの運転手さん…などです。その人たちから、子どもは自分にとって特別に大切な人を数人選んでいます。中でも「困ったときに助けてもらいたい」「一緒にいて安心したい」というような“心の安全・安心を護ってほしい”という“特別な人”を決めていて、この人が子どもの心を支える中心にいます。
 質問者の娘さんは、この“特別な人”としてお父さんを選んでいるようです。娘さんは父親がとくに好きで、父親といると安定した気持ちでいられるのだと考えられます。このような人を心理学では“愛着の対象”と呼びます。“愛着の対象”は1歳ごろから“心の安全・安定を護ってくれる人”として子どもが自分で選んだ人ですから、ほかの人が代わるのは極めて難しいです。無理に代わろうとすると心の安全・安心が脅かされることになりますので、子どもは強く抵抗し、動揺します。ですから、母親でも父子の関係に割って入るのは難しいですし、望ましいことではありません。しかし、おそらく娘さんにとって母親は大切な二番手の人でしょうから、一番手の父親が不在のとき、あるいは子どもがとても機嫌が良く安心しているときには、母親ともうまくやれるはずです。父親が「大丈夫だよ。ママとやってごらん」と娘さんに勧めると、「パパが言うからママとしてみようかな」と、子どもはママを受け入れるでしょう。それには、一番手の父親の上手な支援が必要です。
 娘さんのこのような心の状態を理解して、娘さんが「お父さん子」であることを認めましょう。「お父さん子」であることで子どもを責めたり、「ママ嫌い」と言うのを禁じたりしなければ、子どもは安心し「ママ嫌い」という発話も減っていくことでしょう。
(2)なぜ幼児が「ママ嫌い」と言うのか、その理由はわからない
 いろいろ調べてみましたが、母親にも子どもにも、母親を嫌う理由は見つかりませんでした。ここで紹介したいのは、長年にわたって母子関係を研究していた先輩の心理学者の「馬が合わない母子がある」という発言です。多くの母子関係を見ていると、なぜかわからないものの、気が合わない母子がいるというのです。「ママ嫌い」と言われるのは確かに母親としては残念なことかもしれません。しかし、なぜか「馬が合う」父子なのですから仕方がありません。誰の責任でもないのです。
 そこで提案です。子どもが母親に依存するような“お母さん子”ではなくて助かったと割り切るのがよいと思います。娘さんがママを必要だと求めたときに、それに応じてあげればよいのです。親子関係は生涯続く長い関係です。娘さんはすぐに成長し、女性の先輩として尊敬できる母親を必要とするようになるでしょう。母親の考えを求めるようにもなるでしょう。母子関係のあり方は変化していきます。
 幸いなことに、お子さんの世話は父親に任せてよいのですから、母親であってもご自分のための時間を作りやすいでしょう。いまは、“自分育て”をしようと割り切る絶好のときです。人生百年時代です。ご自分の生涯発達を改めて考えてみてはいかがでしょう。自分のこれからの長い人生を考え、目標に向かって努力をし、楽しそうに生活するお母さんは、成長を続ける娘さんにとっても刺激的で魅力的に見えることでしょう。