歯とお口のケア
Q. 1歳1か月。上の歯が4本生えたのに、下が1本も生えません (2024.11)
- (妊娠週数・月齢)1歳1か月
1歳1か月の女の子を育てています。1歳ごろに上の歯が生え始め、現在上は4本生えていますが、下の歯がまだ1本も生えていません。生まれたときに下の歯が2本生えていて、産院で、「先天魔歯」と言われました。その歯は2本とも生後1~2週間で抜けたのですが関係ありますか?
回答者: 井上美津子先生
出生時にすでに生えていた歯(先天歯)が関連しているものと推察されます。その歯が、本来の下の乳歯だった可能性が高く、またはその歯の影響で本来の乳歯が生えにくい状態になっていることも、まれですが、考えられます。今後の対応も含めて、相談や定期的な管理をしてもらえるかかりつけ歯科医院、できれば小児歯科医のいる歯科医院を探して、診ていただくことをお勧めします。
「先天歯」は、出生時にすでに生えている歯、または生後4週間以内(新生児期)に生えてきた歯を指します。発生頻度は約0.1%で、そのほとんどが下顎の前歯部に認められます。昔は「魔歯」と呼ばれていたので、「先天魔歯」などの呼ばれ方もするのでしょう。
先天歯は、歯根が形成されていないことが多く、動揺が著しいと自然に脱落しやすいですし、グラグラになって誤嚥の危険性がある(この時期の赤ちゃんは固形物を飲み込むことに慣れていないので、脱落した歯が誤って気道のほうに入ってしまうリスクがあります)場合は、抜歯することもあります。
また、先天歯は過剰歯のこともありますが、本来の乳歯が早期に萌出した場合が多いことが報告されています。乳歯が新生児期に脱落してしまった場合は、次の永久歯が生えてくる5~6歳ごろまでは審美的、機能的な管理が必要となるでしょう。
上記の理由で、1歳を過ぎて上の前歯が生えたのに、下の前歯が生えていない状況には、出生後すぐに抜けてしまった先天歯の関連が高いと考えられます。抜けた先天歯が、本来の乳歯(下顎の乳中切歯)である可能性が高いと思われますが、ごくまれに先天歯が過剰歯で乳歯の萌出方向が障害されて生えてこられない場合もありますので、急ぎませんが歯科医院でエックス線写真を撮って確認しておくとよいかと思われます。
ご質問のお子さんは、上の歯が生え始めたのが1歳ごろということで、乳歯の生え方は少しゆっくりめのようですが、おそらく次は下の脇の前歯(乳側切歯)が生え、1歳6か月ごろには最初の奥歯(第一乳臼歯)が生えてくるものと思われます。下の前歯がないと、前歯での噛みとりなどにやや不自由があるかもしれませんが、脇の前歯が生えてくると食べ物を左右どちらかの脇のほうにずらして噛みとることも覚えていくことでしょう。
下の前歯がないことは、上の前歯ほど目立ちにくいですが、永久歯が生えてくる5~6歳までないことで、脇の歯が寄ってきたり、舌の動きに影響したり、また本人が気にしたりと、いろいろな問題が生じることも考えられます。
早めにかかりつけ歯科医院、できれば小児歯科医のいる歯科医院を見つけて、相談にのってもらったり、定期的な管理をしてもらうことをお勧めします。必要があれば入れ歯のような装置を作ってもらうなどの対応も検討していくとよいでしょう。