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ママ・パパの気持ち

Q. 3歳の娘を怒鳴る自分の姿が、自分の父に重なります (2025.2)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳になる娘がいます。娘はとてもやさしくて、明るくて、本当にいい子に育っていると思います。しかし娘が1歳のころから、ときどき娘に対するイライラが抑えられなくなり、そのたびに娘の頬をつねったり、大声で「ダメ!」「〇〇!(娘の名前)」と言ったりしていました。最近、娘はとても繊細に私の怒りの感情を感じ取り、尋常じゃない泣き方をするようになったので、「この怒り方は、もう二度としないようにしよう」と心に誓いました。でも、私に余裕がないときや私自身不安を抱えているときなどに、やはり娘に対してイライラし、頭の中で娘を怒鳴りつけている自分の姿が思い浮かびます。
私の父はすでに亡くなっていますが、いつも私を怒鳴りつけては頬を叩くような人でした。いまの私は父にそっくりなのではないかと考えてしまい、とてもつらいです。娘は頻繁に唇を触るくせもあり、これも私が怒鳴ってきたせいだ・・・と反省しています。どうしたら娘をもっとかわいがり、楽しい子育てができるようになるのでしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 あなたは子どものころ、どれだけたくさんのつらい思いを抱えてきたのでしょうか。それなのに、娘さんに同じように接してしまうご自分を抑えることができず、いま、またつらい思いをされているように思います。

 あなたは、娘さんをもっとかわいがり、楽しい子育てができるようになりたいと思っています。ではどうしたら、そうなれるのかを一緒に考えていきましょう。

 あなたは「この怒り方は、もう二度としないようにしよう」と心に誓われました。でも、そう誓ったとしても、刻み込まれた子どものころのつらい体験は、あなたの記憶にしっかり残っていて、同じようなシチュエーションになれば、その記憶が引き出されてしまいます。よほどしっかり自分を抑え、「誓い」を自分に意識させない限り、体験した記憶のほうが優先されて無意識に再現されてしまうのです。

 あなたは「余裕がないときや私自身不安を抱えているときなど」にイライラすることがわかっています。その気づきが大切です。そうならないようにすることを考えることができるからです。あなたの余裕がなくなるときはどういうときでしょうか。同じような場面にならないようにしていくことで、あなたのイライラをなくすことができます。たとえば、家の中で娘さんと2人のときに、娘さんがあなたの言うことを聞かないことが3回続くとイライラが抑えられなくなるとしたら、娘さんが2回言うことを聞かなければ、公園やこども家庭センターに行って、環境を変えたり、第三者を場面に入れることで、防ぐことができます。もちろん、そんなに単純に回数で決められることではありませんが、基本の考え方です。
 
 あなたは、娘さんのことを「とてもやさしくて、明るくて、本当にいい子に育っている」と思っています。そう思えるあなたは娘さんにとって素敵な母親です。あなたは親としての自信をもってよい。あなたはちゃんと娘さんの良さがわかっているのです。

 あなたが、娘さんの良さを感じるときはどのような場面でしょうか。できるだけ娘さんの良さがわかるような場面を見つけて、「〇〇、ありがとう」「〇〇、私はうれしいわ」と言葉をかけます。たとえば、靴を履かせるときに履かせやすいように足を動かしてくれたり、おいしいと思ったものをあなたにも食べてほしいと思って差し出したり。ちょっとしたことでよいのです。あなたが本当に娘さんの良さを感じることであれば、なんでもよいです。娘さんの良さを繰り返し体験していくことで、あなたはどんどん娘さんの良さを実感して、イライラする気持ちが抑えやすくなります。

 それから朝晩、娘さんが起きてきたときと眠るとき、娘さんをしっかりハグして「ママの好きな〇〇ちゃん、おはよう(おやすみなさい)。今日も楽しいことがあるといいね(今日は楽しかったね、また明日)」と話してください。毎日できたら365日×2回、娘さんはあなたからの愛情を記憶していきます。1分もかかりませんし、最初は気持ちが伴わないかもしれません。でも、しているうちにあなたの気持ちも、この時間だけは言葉と一致することが出てきます。娘さんにとっては一生残る愛された記憶の宝物です。

 あなたの心の中には、あなたの父親にされたことで傷ついている子どものあなたがいます。その傷に向き合わないようにすることが生きる力につながることもありますが、ずっと怒りや悲しみの感情が消えずに残ってしまっています。過去に起きたことは変えることができません。でも捉え方を変えることはできます。その傷に向き合って、なぜ、あのとき叩かれたのか、怒鳴られたのか、そのときの思いを整理することができれば、傷ついた子どもが消えていきます。この過程を1人でするのは難しいかもしれません。そのときは1人でがんばろうとされずに、あなたが信頼できる専門職を見つけ、その人と一緒に過去の傷を整理していくとよいのではないでしょうか。

 過去を変えることはできません。でも、これからのこと、未来は変えることができます。あなたの娘さんとあなたの関係は、少しゆがんでしまったかもしれません。でも、子どもは心から謝ることができれば許してくれます。今回、こうしてあなたが質問をされたことは、勇気のいることだったと思います。それでもあなたは先に進みました。あなたには自分を変えようとする力があります。これを契機として、あなたが一つずつ、楽しい子育てができるようになることを願っています。