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性格・親のかかわり・育て方

Q. 体験入園で泣く3歳の娘。無理に預けると何か影響が出ないか心配です。 (2025.4)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳の娘がいます。私は娘のことが大好きですし、娘にもその気持ちを伝えてきました。一方で自分の感情が抑えきれず、怒鳴りつけることが何回もありました。自分でも「これではいけない」と思い、自己流のカウンセリングを始めましたが、育児に自信が持てません。
そんな不安定な母親に育てられたせいか、娘は親子教室などに行くと慣れるのに時間がかかります。ほかの子が友だち同士で遊び始めても、ずっと私の膝にいましたが、通い始めて半年以上たち、やっと友だちの輪に入って遊ぶようになりました。ちなみに集団ではなく、知っている友だち2~3人とだと一緒に遊びます。
先日、幼稚園の体験入園がありました。そのときも娘だけが、私と離れたがらずに泣いていました。でも私と離れたらすぐに泣き止んで、遊び始めたそうです。迎えに行くと、ニヤニヤして「ママのところに行こうかな?」みたいな様子でした。娘は「幼稚園には行かない。おうちでママと本を読んでいる」と言います。泣くほど拒否している子を無理に預けると、何か影響が出ないか不安です。どのように考えるとよいのでしょうか。

回答者: 遠藤利彦先生

 ご存じかもしれませんが、こども家庭庁が「はじめの100か月の育ちビジョン」なるものを打ち出しています。このはじめの100か月とは、まだ子どもがお母さんのおなかの中に胎児としている段階から小学校1年までの期間を指しているのですが、そこで強調されているのは、この時期の子どもの経験のあり方が、その後の人の一生涯にわたる心と身体の健康や幸せの土台形成に決定的に重要な意味を有しているということです。そして、その経験の中でも、とりわけ「安心と挑戦の繰り返し」の重要性が声高に叫ばれています。
 確かに、大好きなお母さんといつも一緒にいられれば、お子さんが安心感を確実に得られることは間違いのないことです。しかし、当然のことながら、そうしてばかりいては、お子さんが自ら新しいものに挑戦する機会が限られてしまうこともまた確かなことと言えます。おそらくお子さんは、いま、まさにおうちを離れ、お母さんと離れることに大きな不安を抱えながらも、園という新しい環境に、一方では密かに胸に好奇心を膨らませて、果敢に挑戦しようとしているのだと理解することができます。最初のうちは、お子さんの感情が崩れ、お母さんが胸を痛めることも少なからずあると思います。しかし、お母さんの役割は、ただお子さんに安心感を与えてあげることだけではないはずです。お子さんにとっての一番の応援団になって、お子さんが冒険や探検に向かっていけるよう、そしていろいろなことにチャレンジできるように、その背中をちゃんと押してあげることもまた、子どもの健康な心の発達に必要不可欠なことです。
 文面からするとすでにお子さんは、ときどきは友だち同士で遊ぶこともちゃんとできるようですので「大丈夫、大丈夫」と穏やかな笑顔でぜひ、お子さんを新しい環境に送り出してあげてください。言うまでもありませんが、子どもは大人との関係の中だけで成長するわけではありません。それとともに、あるいはそれ以上に、子ども同士の関係の中でも成長します。大人の役割は、自分が子どもの直接的なやりとりの相手になってあげることだけではなく、子ども同士の豊かなやりとりや遊びを、応援団や黒子となって下支えしてあげることでもあるのだということを、この機会に少し考えていただければと切に願うものです。