赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー性格・親のかかわり・育て方

性格・親のかかわり・育て方

Q. 自分の意見や気持ちを伝えるのが苦手な3歳7か月の娘。 (2025.5)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳7か月の娘がいます。娘は、自分の意見や気持ちを伝えるのが苦手で、すぐ言葉に詰まり泣き出します。トイレに行きたいときに「トイレに行く」と言えることもありますが、股を押さえたり、足をモジモジしたりしてアピールして、相手が察して「トイレに行く?」と聞いてくれるのを待っている感じです。「好きな食べ物は?」など、答えが決まっているものは答えられますが、「〇〇ちゃんはどうしたい?」「ママはどうしたらいい?」「何して遊ぶ?」など、答えが決まっていないことを聞かれると言葉に詰まり、泣き出します。本格的に泣き出す前にウインクをするように片目をずっとつぶったり、しきりに舌を出してぺろぺろするなど気になる様子も見られはじめました。
1歳7か月から私の職場の託児所に通っていましたが、今春から幼稚園に通っています。入園を機に、私が「お口で言わないとわからないよ!」と厳しく言い聞かせていることがプレッシャーになっているのかもしれません。
私自身、子どものころから相手の顔色を伺い、察してもらおうとすることが多く、母に「言いたいことは、はっきり言わなければわからない」と言われ続けてきました。でも、いまだに自分の意見を言うのが苦手です。娘には、私のようになってほしくないと思っています。娘への接し方を教えてください。

回答者: 遠藤利彦先生

 言うまでもありませんが、子ども一人ひとりには、生まれもったそれぞれ固有の気質や個性が備わっています。基本的にそれ自体、良い、悪いという視点で判断されるべきものではありません。またそれだけで、その後の子どもの発達の方向性が決定づけられてしまうというようなものでもありません。子どもの発達は、そうした子ども自身の気質や個性と、親御さんの子育ての仕方も含めた、子どもを取り巻く環境がどれだけうまくマッチしているかということが重要な鍵を握ります。
 もしかするとお子さんは、自分の周りの状況に敏感で、慎重にそれを理解しようとする傾向が強いのかもしれません。また、もともと意思が希薄というわけではなく、じっくりと時間をかけて、マイペースで自分の意思を形作ろうとする傾向が強いのかもしれません。しかしいま、まさに頭の中でいろいろなことを感じたり、考えたりしている、その真っ最中に、すぐに何か答えを出すように求められたら、お子さんはとても戸惑ってしまうのではないでしょうか。そして、そうしたことが日常、頻回にわたるようになると、徐々にストレスが高じ、自分のペースで気持ちをまとめ、それを言葉に出すこと自体、難しくなってしまうということがあるのかもしれません。
 少し考えていただきたいのは、お子さんにとって心地のよいペースを見極めるということです。お母様からすると少しじれったりかもしれませんが、さりげなくお子さんの様子を「見守り」、「待ってみる」ということを少し心がけてはいかがでしょうか。
 それともう1つ、お子さんに何かを問うて答えさせるというパターンではなく、お子さんとの相互的なやりとりやコミュケーション、それ自体を親子で一緒に楽しむことも少し意識していただくとよろしいかもしれません。何も難しいことではありません。お子さんが好奇心をもって見ているものに、お母様も一緒に視線を注ぎ、そのときのお母様の気持ちを素直に言葉に出せばよいのです。
 たとえば、お子さんが目の前の猫を夢中になって見て、声でも出していたら、お母様もその猫を見て「その猫ちゃん、ちっちゃくて、かわいい」と言う、ただそれだけのことです。心理学では、こうした2人の人間が同じものを一緒に見て気持ちを通わすことを「共同注意」と言いますが、この状況で1つの共通のトピックに関して、お互いにそれぞれ自分の気持ちを言葉にしてやりとりをすることが、親子の信頼感を強め、お子さんの中に「自分の好きなこと、考えたこと、何やってもいいんだ、何言ってもいいんだ」という安心感を与えることにつながるように思います。そして、きっとそれが自己主張の力の下地を作ることになるでしょう。