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性格・親のかかわり・育て方

Q. 3歳。新生児のころからずっと「子どもに何かあったら」と不安です。 (2025.6)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳の男の子の母親です。子どもがかわいくて、新生児のころから「この子に何かあったらどうしよう」と考えてしまいます。たとえば「寝ている間に呼吸が止まるのでは?」「食事がのどにつまるのでは?」「街中で急に車が突っ込んできたら・・・」などと考えて、不安になります。防げそうな事故には対策をしてきたつもりですが、子どもに関する事件や事故のニュースを見ると怖くなります。保育園に通うようになった現在も「仕事中に、何か恐ろしいことが起きるのではないか」と思ってしまいます。
以前、保健師さんや園の先生に相談したところ、「子どもが大きくなれば心配も和らぐ」と言われました。でも3歳になっても、不安でどうしようもありません。不安感や心配しすぎる気持ちを和らげることはできますか。

回答者: 帆足暁子先生

 「子どもが大きくなれば心配も和らぐ」と言われたのに、不安感や心配しすぎる気持ちが和らいでいないのですね。どうしたら和らげるかを考えてみましょう。

 まずは、一般論から考えてみます。
 人間はほかの動物と違って未熟な状態で生まれ、約1年の生理的早産であると言われています。確かに、生まれたばかりの赤ちゃんは何もできなくて、すべて親にやってもらわなければ生きていくことができません。ですから、あなたの不安感や心配は当然なことでした。でも1年たつころには、自分で食べ、自分の足で歩き、人間としての言葉を使えるようになっていきます。そして、1歳代には子どもの自我も芽生え、嫌なことや良いことの意思表示をして、次第に親とは違う人格をもっている一人の人間だということを親にも主張するようになります。そして2歳前後には「イヤイヤ期(第一反抗期)」に入り、さらに自立する子どもへと成長します。お子さんはいま、3歳。生まれたころから比べるとずいぶん子どもらしく育たれたのではないでしょうか。

 ただ、あなたはお子さんが大きくなっても不安感や心配があるのです。その場合には、2通りの考え方ができます。

 1つは、お子さん自身のことです。お子さんの身体が小さく生まれて成長がゆっくりだったりすると心配になります。また、病気にかかりやすかったりしても心配になります。お子さんの自我が強ければ、子育ては疲れるものの不安にはなりませんが、自我が弱くて何も主張しなかったり、自分から動こうとしなかったりして生きる力が弱いと感じるとやはり心配になります。身体や病気については医療と一緒に考えることで不安は和らぎますが、気質や性格はなかなか変わりませんから、お子さんと一緒の生活を通して不安感や心配は和らがないのかもしれません。

 もう1つは、あなたご自身のことです。
 あなたはこれまで、不安感や、心配になることは多かったでしょうか。そうだとしたら、あなたには何か理由があって、不安感や、心配を感じやすい傾向があるのかもしれません。確かにあなたが書かれた心配事はこれまで世の中で実際に起きたことばかりです。あなたの心配は正しいと思います。ただ、これまで起きた心配なことを全部考え続けていたら、自分の生活が立ち行かなくなるので、人間の脳は上手に命を守るために、忘れてはいけないこと以外は日々忘れるようにして、日常生活ができるように働くのですが、あなたの不安感や心配は和らいではいないということになります。

 さて、ではどうするかを考えます。
 1つは、お子さんが成長して一人でできるようになってきたことを毎晩ノートに書いたり、スマホに入力したりして、1週間経ったときにまとめて読み直してみます。子どもは毎日少しずつ成長します。でも一緒にいるとそのちょっとした成長は見えにくいのです。この方法の目的は、お子さんが一人の人間として自分のことは自分で守れるように、つまり自立した人間になっていっているという記録を繰り返し見ることで理解し、自分が心配をする必要がないことを認識するためのトレーニングです。

 もう1つは、先に書きましたように、あなたに不安感や心配になる理由があって、脳があなたを守るために働いていると思うので、それを整理し直していくことです。たぶん、過去にあなたが不安感や心配にならなかったためにとても怖い体験が起きてしまったり、逆に不安感を抱いたり、心配をすることでとても怖い体験から救われたりした強い記憶が脳に残ってしまって、生きるために脳が忘れさせてくれないように思います。ですから、その記憶から抜け出します。それには、その記憶を見つけ、そのときどうしたら安心できるかを考えます。そして、その不安感や心配は心の中に抱えたまま、自分が安心できるように、生活の中でできることを一つひとつ実行していきます。実は、不安感や心配事に気持ちを向けてしまうと、さらにその気持ちから抜け出せなくなる「とらわれの規制」という働きが脳にはあるからです。実際の生活の中で自分が安心できることをしている実感が増えていくと、自分の認識を変えることができます。

 いずれのトレーニングも一人でやってみてもよいですし、一人だと進めることは難しいかもしれません。そのときには、あなたが一人でがんばる必要はありません。あなたが安心して子育てができるように、信頼できる保健師や園の先生、こども家庭センターなどのスタッフと一緒に考えてもらってください。