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ホーム連載・読み物 インタビューシリーズ第10回 唐澤真弓さん その1

インタビューシリーズ:親も子もトライ&エラー

日々、親ごさんと接しているかたや、子育て奮闘中のかたにお話を伺っていきます。

シリーズ第10回 その1
正しい子育ての方法は
ひとつではない

唐澤真弓さん

唐澤真弓さん
プロフィール
東京女子大学現代文化学部
コミュニケーション学科教授

今回のお客様は東京女子大学教授の唐澤真弓さん。それぞれの国の文化の違いが、子育てや教育にどんな影響を与えているのか、それが子どもの心の発達にどう関わるのか、国際比較を研究しています。ところ変われば、子育ての常識も変わるようです。

Part1 正しい子育ての方法はひとつではない
Part2 子育ては「答え」を自分で作っていく作業
Part3 自分の意見を言える子どもに育つには?
Part4 同じであれ、という雰囲気のなかで、自分らしさを大切にするには?

2008年1月24日掲載

編集部:子育てやしつけについての考え方や方法は、国によってだいぶ違うようですね?

唐澤:たとえば、日本とアメリカの1歳児の親に、添い寝について聞いたところ、日本では「同じ部屋で寝ている」という回答が9割だったのに対して、アメリカの中産階級の白人ではわずか3%。9割以上の親子が別室で寝ていました。

編集部:9割も、ですか?

唐澤:アメリカの子育て相談には、「うちの母は小学生の弟と同じ部屋に寝ていますが、おかしいのでは?」といった質問が寄せられたりします。

編集部:では、日本の親はみんなおかしいことになりますね(笑)

唐澤:何を重要視するかで、子育ての方法もおのずと違ってくるわけですね(笑) アメリカ人は「自己主張」や「自立」を重視していて、物理的な分離・・・別室で寝かせることが自立を促し問題行動を起こさなくなると考えている。それで、別室で寝かせることが正しいのだと思っています。 一方、日本人は共感性や思いやりを大事にしていて、空間を共有していることが、相手の気持ちを察することになり、思いやりを育てると考えている。

唐澤真弓さん

編集部:なるほど。添い寝をするかどうかということの背景に、そういう意味があるのですね。

唐澤:アメリカ人が別室で寝かせることを「冷たい」と感じる人もいますが、決してそうではないの。別室で寝かせることで「自立心が育つ」「問題行動を起こさない子に育つ」と考えて、彼らなりに努力して実践しているんですね。
ところが、アメリカのブラゼルトンという小児科医が疑問を持ちました。
「親子分離をしたほうが、問題行動が少なくなるはずなのに、犯罪率はアメリカのほうが日本よりも10〜20倍も多いのはなぜだろう。別室で寝かせるのは本当に正しいのか」と。

編集部:それで、アメリカの子育ては変わったんですか?

唐澤:いいえ。でも、子育ての方法はさまざまな形があるとわかったのですね。
このブラゼルトンの疑問がきっかけで、子育ての国際比較研究が注目されるようになりました。

編集部:国際比較をすると、どんな育て方をすると、どんな大人になるか、少し傾向がわかりそうですね。

唐澤:子どもの性質や環境にもよりますから、あくまでも傾向ですが、でも国ごとに比較すると、違いがはっきりしてきますね。

編集部:ほかにも具体的な事例がありますか?

唐澤:アメリカのシュエダー教授のインドの調査が面白いです。
アメリカ人とインド人に、「夫婦、思春期の息子と娘、小学生の男の子と女の子、2歳の男の子、計7人の家族が2部屋しかない家に住むとしたらどんな部屋割りにしますか?」と聞いたところ、次のような回答が返ってきました。
アメリカ人は「夫婦と子どもに分ける」が最も多い。インド人は「男性の部屋と女性の部屋に分けるが、2歳の男の子はお母さんと一緒の部屋」という回答だったんですね。
インドでは「たとえきょうだいでも、思春期の男女を一緒にしない」という価値観が重要視されていることがわかりました。

編集部:文化の違い、価値観の違いによって、ライフスタイルもさまざまということですね。


ミニコラム 日本の常識、海外の常識

子どもの留守番は、虐待行為?(アメリカ)

自立を重視するアメリカでは、誰もが18歳になると、家を出て寮から学校に通うとか。物理的に親と離れて自立するのですね。
その一方で、セキュリティの関係で、親が子どもの行動に責任を持つ期間が長い!
習い事や友人宅に遊びに行くときも、学校も高校生まで大人の送り迎えが必要。日本のようにデパートのオモチャ売り場で遊ばせておいて親は買い物、というのはありえないようです。子どもが昼寝している間に買い物に出るのも虐待行為とみなされてしまいます。

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