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トップ連載・読み物 インタビューシリーズ第10回 唐澤真弓さん その4

インタビューシリーズ:親も子もトライ&エラー

日々、親ごさんと接しているかたや、子育て奮闘中のかたにお話を伺っていきます。

シリーズ第10回 その4
同じであれ、という雰囲気のなかで、
自分らしさを大切にするには?

唐澤真弓さん

唐澤真弓さん
プロフィール
東京女子大学現代文化学部
コミュニケーション学科教授

今回のお客様は東京女子大学教授の唐澤真弓さん。それぞれの国の文化の違いが、子育てや教育にどんな影響を与えているのか、それが子どもの心の発達にどう関わるのか、国際比較を研究しています。ところ変われば、子育ての常識も変わるようです。

Part1 正しい子育ての方法はひとつではない
Part2 子育ては「答え」を自分で作っていく作業
Part3 自分の意見を言える子どもに育つには?
Part4 同じであれ、という雰囲気のなかで、自分らしさを大切にするには?

2008年4月15日掲載

編集部:前回は、子どもが自分の考えを言えるようになるために、親が子どもの気持ちや意見を聞く機会を増やすとよい、というお話でした。

唐澤:それは、「自分と考え方が違う人もいる」と気づくチャンスにもなると思います。

そのとき、「人に合わせて自分の意見を変える必要はない」と子どもに教えてあげることが大事です。「人は、それぞれ違う考えを持っている」ということも、ぜひ伝えたいですね。

ともすると、考えが違うと相手の人格まで否定してしまったり、あるいは逆に、自分に不安を抱いたりしがちです。

では、自分と意見の違う人とどう接するか? 違うから自分の意見はもう言わないとか、すぐに引き下がるとかではなく、お互いに主張しながら調整する力をつけられるといい。

最初から同じであろうとするのと、お互いの違いを理解したうえで歩み寄ろうといるのでは、大きく違います。

ただ、双方が自己主張し合う関係になれないと、ひとり相撲になってしまうので、日本ではまず、「言いたいことを言える関係づくり」が先決ですね。

唐澤真弓さん

編集部:お互いに、というのが大事なわけですね。家庭でなら親子で実行できそうですね。

唐澤:相手の立場に立って考えることができるようになってくるのは、5歳前後だと言われています。
アメリカと日本で調査したところ、アメリカの方が日本の子より半年早くできるようになる、という結果が出ました。

編集部:なぜでしょうか。

唐澤真弓さん

唐澤:日本では暗黙のうちに「みんな一緒であることがいい」という空気がありますね。共感性を重視するなかでは、他者の立場を論理的に理解することが、むずかしいのかもしれません。
「みんな違っているんだ」と思えると、もっと自分に自信が持てるようになると思います。
それにはやはり、人と比べて自分はどうなのかではなく、自分は何をしたいのか、何を食べたいのか、と自分に問い続けること。しんどいことですが、つねに自分と向き合うことだと思います。人と比べないと自分のことがわからないというのは残念です。
公園などで自分と違う子育てをしている人に出会ったら、それを不安に思うのではなく、「どこが、どう違っているのだろう」「それはなぜだろう」と観察してみると、おもしろいと思いますよ。

編集部:ありがとうございました。