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Q. 1歳7か月の女の子。消失した言語があるのが心配です。 (2016.5)

  • (妊娠週数・月齢)1歳7か月

1歳7か月の女の子です。1歳3か月で観葉植物を指さし「ハッパ」、猫を指さし「ニャンニャ」と言うことが何度かありました。1歳5か月で家族そろってノロウイルスにかかり、1か月ほどテレビを見るなどして家でおとなしく過ごしていたら、発話も指さしもしなくなりました。1歳半健診で言葉の遅れを指摘され、慌ててテレビをやめて外に連れ出し、極力話しかけて指さししてやると、少しずつ指さしも発話も戻りました。しかし、以前話していた「ハッパ」「ニャンニャ」「ワンワン」「ブーブー」は言えないままです。言語の消失は折れ線型自閉症の兆候と聞き心配です。他の理由で言語の消失はあるのでしょうか。

回答者: 汐見稔幸先生

 ノロウイルスと発話、指さしの喪失とは直接には関係がないと思います。医師ではありませんので、確信を持っていうことはできませんが、これまでにそうした事例は聞いたことがありません。また、テレビを見ていたから指さしが消え、発話がなくなったということも、直接の因果関係にないと思います。ただし、テレビばかり見ていて、お子さんとコミュニケーションをするということもまったくしていなかったということであれば、それが一因となっている可能性は否定できないと思います。とはいえ、通常起きている間、テレビばかり見ているということはあまりないのではないでしょうか。

 1歳5か月頃まであった指さしとか発話が1歳7か月で少し回復したということですが、これをもって折れ線型自閉症と断定することは難しいと思います。折れ線型の自閉症は、いったん言葉がなくなってから再び言葉が出てくるまでの期間は、もっと長いことが多いと聞いています。そのために、その後の言葉の力が平均よりも遅れることが多くなる可能性があるのだと思いますが、ご相談のケースでは、少し対応を変えると多少の指さし、発話が出てきているのですから、現在の段階で折れ線型自閉症と断定することにも無理があります。

 もちろん、「折れ線型の自閉症である可能性はまったくない」と言うことはできませんが、折れ線型であっても、急にそうなるように見えて、実はそれまでに、自閉症的な兆候を多少とも示していることが多いものです。その点でも、まだ自閉症と断定するのは難しいでしょう。ひょっとしたら、2歳になると、盛んに言葉が出てくるかもしれません。 

 それでもご心配ということであれば、専門家に早期に相談に行かれることをお勧めしますが、専門家にもさまざまな対応の違いがあります。最近、広がっているのはティーチという手法ですが、いくつかの専門家を回って、ご自分で納得のいくところを探すことが大事ということを強調しておきたいと思います。折れ線型を含む自閉症(自閉スペクトラム症)児を、「ダメな子」と見るのではなく、「育ちのデコボコが大きい子」と見ると、親にゆとりが出てきて、それが子どもに自信を与え、子どもの育ち自体も変わるといわれています。いずれにしても、1歳台で正確な判断をすることは難しいということですので、丹念な関わりを大事にして、見守りながら判断してください。