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性格・親のかかわり・育て方

Q. 4歳の息子。園での態度を注意されました。 (2021.6)

  • (妊娠週数・月齢)4歳

年中クラスに通う4歳の息子は、小さなころからかんしゃくがひどく、言葉も遅くて市の発達相談に通っていました。診断をつけてもらう勇気がなく、そのまま幼稚園に入園したのですが、幼稚園入園後はよくしゃべるようになり、かんしゃくもなくなったので安心していました。ところが、園では先生の指示が聞けず、ふざけたり外に出たりして、注意されて大泣きすることがあるようです。保育参観で見ていると、お友だちと仲よく遊んでいますし、発表会もしっかり参加できていましたが、先生からこういった話があるということは、目にあまる行動なのかなと思います。本人は幼稚園が好きで、怒られたことは覚えてないのか、そのことを尋ねても答えません。その場を見ているわけではないので、あとから怒るわけにもいきませんし、家ではそんなことはなくなったため、どう対処していいのかわかりません。

回答者: 汐見稔幸先生

 おそらく幼いころはかんの虫の強い子と言われていたお子さんでしょうね。私の3番目の子もそうでしたし、私自身もそうだったようで、お母さんは苦労されたと思います。

 かんの虫が強いというときの「かん」はかんしゃく持ちという意味です。かんしゃく持ちは気に入らないと激しく泣いたり抗議したりする子で、ちょっとしたことでかんしゃくを起こします。昔からこういう子はある割合で必ずいたようで、よくおまじないでかんの虫を出すというようなことをしていました。アメリカでは子どもには生まれつきこうしたタイプの子はある割合でいるとされていて、difficult childと呼ばれています。日本では手のかかる子と訳されています。北海道大学の三宅先生が調べたら日本では約3割の子がこういうタイプになっているとのことでした。

 おそらく脳の回路でまだ未熟なところが残ってるか、逆に濃密に回路が作られ過ぎているか、などが理由でしょう。脳の回路がある程度安定してきたら次第に収まってくるようです。親は焦らずイライラし過ぎないで、こういうタイプなんだわ、と受容していたら、収まり方が早くなると思います。おそらくご質問されたお母さんもそういう対応をされてきたのだとも思います。
 4歳になって幼稚園児になると、かんしゃくは治ってきたけれども、今度は多動傾向が出てきたということなんでしょうね。

 お子さんの中には、自分の内部から湧いてくる好奇心とか興味がいっぱいで、「こういう風に振る舞わないといけない」という社会から強制された行動の論理に従うなんてつまらない、と思っている子がこれまた一定の割合でいます。そういうタイプのお子さんは、先生から見たら扱いにくい子になるのですが、別の面から見たら実は自由で、うまく育てると将来自分を個性的に表現する仕事をするタイプの子とも言えます。先々社会性が育ってくると、世の中の論理もわかるようになり、手に負えないということはなくなっていきます。小学校の中学年以降でしょうか。

 いまの日本の教育は、そういう、まずは社会の論理よりもぼくの論理というタイプの子を育てるのが苦手で、早く大人の気に入る行動をする子がいい子とされてきたのでした。しかし、最近、もっと自分の好きなことをまずしようと、こういうタイプのお子さんも生き生き過ごせる学校が少しずつできてきています。幼稚園でも遊びを中心にして、集団の論理よりも子どものそれぞれの論理を大事にするというところも増えてきています。もし、お子さんの個性がこのままでは生かされないと思われるのでしたら、違う園を探すのも大事だと思います。いずれにしても、お子さんを叱るのでなく、ゆっくりと話を聞いてあげ、気持ちをわかってあげる努力を続けていれば、きっと個性的で面白い子に育つと思います。